2022年に入り、北朝鮮がミサイル発射を繰り返している。
防衛省は3月11日、北朝鮮が2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルについて、「いずれも大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイル」だとする分析結果を公表した。防衛省によると、北朝鮮がICBM級の弾道ミサイルを発射したのは2017年11月以来となる。
ICBMとは、一体どんなミサイルなのか。
日米「安保理決議違反」と強く非難
防衛省の発表によると、2月と3月のミサイルはいずれも平壌近郊から発射されたものとみられる。
防衛省は、
・2月27日の弾道ミサイルについては、最高高度約600キロメートル程度で、距離約300キロメートル程度を飛翔
・3月5日の弾道ミサイルについては、最高高度約550キロメートル程度で、距離約300キロメートル程度を飛翔
と評価しているが、これは、「ミサイルの最大射程での発射試験を行う前に、何らかの機能の検証を行うことを目的として発射された可能性がある」と分析している。
また、「一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できない」とし、「このような弾道ミサイル発射は、関連する安保理決議に違反するものであり、強く非難する」としている。
このICBM級弾道ミサイルの発射には、日本をはじめ、アメリカも強く非難している。
BBCによると、アメリカ国防総省のジョン・カービー報道官は3月10日、「アメリカは、複数の国連安全保障理事会決議に堂々と違反し、不必要に緊張を高め、地域の安全保障状況を不安定にする危険性のある、これらの発射を強く非難する」と述べている。
ICBMとは?アメリカにも到達する可能性
ICBMは、Intercontinental Ballistic Missileの略称。
「大陸間弾道ミサイル」と呼ばれるように、射程が長距離のため、海を隔てた大陸の間を飛ぶことのできる弾道ミサイルのことだ。
ICBMの射程は最低でも5500キロメートルとされており、北朝鮮から発射された場合、アメリカまで到達する可能性がある。
2021年版の防衛白書によれば、北朝鮮が保有するICBM級弾道ミサイルは、5500キロメートルを大きく超える射程のものもあるとみられる。
2017年11月29日に発射したICBM級弾道ミサイル「火星15」型について、北朝鮮は「アメリカ本土全域を打撃することができ、国家核武装の完成を実現した」と発表しており、防衛白書では「その飛翔高度、距離、公表された映像などを踏まえれば、搭載する弾頭の重量などによっては1万キロメートルを超える射程となりうると考えられる」と分析している。
ICBMは核弾頭を搭載できるように設計されており、核兵器の運搬手段の一つとされている。アメリカは、ICBMのほか、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機を戦略核戦力の「3本柱」としている。
中国・ロシアも保有
2021年版の防衛白書によると、中国は、ICBM、SLBMのほか、中距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルといったさまざまな種類の、幅広い射程の弾道ミサイルを保有している。
中国は近年、発射台付き車両に搭載される移動型のICBM「DF-31」を配備。また、射程約1万1200キロメートルで10個の弾頭を搭載可能と指摘される新型ICBMである「DF-41」を開発している。
ロシアは、アメリカに並ぶ規模のICBM、SLBM、長距離爆撃機を保有している。ミサイル防衛システムを突破できる能力を持つ弾頭を搭載可能とされる大型のICBM「サルマト」を開発中だとしている。