ロシアによるウクライナ侵攻は第三次世界大戦のはじまりなのか。専門家の見解は

ウクライナへのロシア軍侵攻が開始された2月24日、フランスのTwitter上で一番ツイートの多かったワードは「WWIII」と「Troisième Guerre mondiale」(「第三次世界大戦」の意)だった。
ウクライナ西部の都市リヴィウの中央駅で(2022年3月9日)
ウクライナ西部の都市リヴィウの中央駅で(2022年3月9日)
AFP=時事

「ロシアがウクライナで複数の町を攻撃して占領した」。

2月24日、世界中がこのニュースに直面した。

ロシアとウクライナが極度の緊迫状態にあるなか、戦争はヨーロッパの玄関口に立っているのか。

何が起ころうとしているのだろう。

ロシアのプーチン大統領はどこまで行くつもりなのだろう。

私たちは戦争の渦の中にいるのだろうか。

ロシア軍によるウクライナ侵攻はこれから何を巻き込んでいくのか、私たちは予想がつかずにいる。

私たちは第三次大戦の入り口に立たされているのだろうか

Twitterでは、同日に最もツイートされたワードが「WWIII」「World War 3」、同義のフランス語「Troisième Guerre mondiale」(「第三次世界大戦」の意)だった。 

多くのユーザーが第一次世界大戦や第二次大戦を意識し、自分も軍隊名簿に載って強制的に戦争に参加しなければいけなくなる日を想像した。

いま私たちは第三次大戦の入り口に立たされているのだろうか。

モンペリエ大学とパリ外交研究所でロシア地政学に詳しいキャロル・グリモ・ポター氏に聞いた。

━━ロシア軍によってウクライナへの侵攻が開始されたことで世界的な戦争がはじまってしまうのでしょうか?

いいえ、第三次世界大戦に向かっていくのではありません。しかし、懸念の声が上がるのは当然です。問いを発したり、懸念されたりしてもおかしくないことです。 

━━なぜ世界的な大戦にはならないといえますか?

ウクライナはNATO加盟国ではないので、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という集団防衛のルールが適用されません。それはウクライナにとっては不幸なことですが、私たちにとっては幸運なことと言えます。

アメリカのバイデン大統領はウクライナに米軍を派遣することは検討していないと述べました。NATOの加盟国も介入しません。ただ、軍事的支援をする可能性はあります。

公式な外国の軍隊はウクライナに駐留していません。ドンバス戦争の流れから考えると、非公式の民兵や民間の軍事会社はあるかもしれませんが、いずれにしても公式なものではありません。

━━プーチン大統領がウクライナから範囲を広げる可能性はあるのでしょうか? プーチン大統領が隣国であるウクライナに焦点を合わせる理由は? 焦点が旧ソビエト系の他国にも及ぶことはあるのでしょうか?

今回の侵攻は、これまで何年にも渡ってロシアと西側諸国の間に存在してきた緊張関係の爆発とみるべきでしょう。

2000年代にクレムリンがNATOの東方拡大を非難して以降、ロシアはNATOのヨーロッパにおける安全保障の再建を要求してきました。その要求が宙に浮いたままのところへ、ウクライナは西を向いてNATOとEUへの加盟を求めました。

今、モスクワが目指しているのは、ウクライナ政権を東に向かせ親ロシア政府に置き換えることです。

プーチン大統領が旧ソビエト系の他国をも攻撃する可能性があるかどうかについては、完全にないとは言い切れません。別の隣接国でも今回と同じシナリオが繰り返される可能性はあります。

特にポーランドやバルト諸国。これらの国がNATO加盟国であることが、ロシア軍の圧力がこれらの国の国境に及ばないとは言い切れない理由です。いずれにしても、今の焦点はウクライナにあります。

━━現時点では、世界的にどんな影響があると考えられるでしょうか?

冷戦は起こるかもしれません。ポーランドとバルト諸国は軍事インフラを保持しているので、むしろロシア政権は軍事インフラがないウクライナを取ることでパワーバランスを取ろうとしています。

ロシアはベラルーシに軍事基地を建設し、その地で核兵器を含む軍事的な広がりを見せるでしょう。日数としては数カ月かかるはずです。

そして、継続的な軍事圧力と脅威によって、かつてのような冷戦状態へ向かっていく可能性です。

ロシアは外交的にも経済的にも孤立していくでしょう。中国とタッグでブロック経済を組むかもしれません。

ウクライナは侵攻を受けて多くの人が国外に避難するでしょう。避難先は、すでに多くのウクライナ人を受け入れているポーランド、フランス、他のEU諸国、多くのウクライナ人移民を抱えるカナダ、そしてアメリカ領です。アメリカは入国を促進すると思います。

━━フランスはこの紛争に軍事的介入をするでしょうか?

今、マクロン大統領は制裁を約束しているだけです。フランス軍が軍事介入するとは私はみていません。ヨーロッパ諸国の中で、NATOやEUとは別に独力で軍事介入を行う準備ができている国も他にはないでしょう? 可能だとしても、EUから独立してそれを行いたいと思っている国があるとは思えません。EUが掲げる統一のイメージが曖昧になってしまいますから。

ウクライナのゼレンスキー大統領も、現時点では外国の武装勢力が入ってくることを望んでいません。(編注:その後、ウクライナ領空をNATOの「飛行禁止空域」にすることを求めていたが、ロシアとの戦闘を避けたいNATOから却下されている)

自ら危険を犯す国はないでしょう。特にプーチン大統領が演説によって、彼を止める勢力に対して、「これまでにない結果になりかねない」と圧力をかけて以降は。核兵器を意識しないわけにはいきません。ですから冷静な頭を使って、国のリーダーが決断するのを待つしかありません。

━━待っていたら、ウクライナはどうなるでしょう?

今のところ、ウクライナは自分たちの武装勢力だけでロシア軍に立ち向かってもらうしかないです、残念なことですが。

ハフポスト フランス版の記事を翻訳しました。  

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