マクドナルドが、ロシアにおける一時的な店舗の閉鎖と営業停止を決めた。
ガーディアンによると、マクドナルドがロシアで営業を始めたのは、ソビエト連邦時代の1990年1月31日。モスクワのプーシキン広場にロシア1号店をオープンした。当時、アメリカ資本主義の象徴であるビッグマックを味わおうと、推定3万8000人のソ連の人々が何時間も行列を作ったという。
およそ30年続けてきたロシアでの営業の停止。写真とともに、当時を振り返る。
ソ連下でオープン。マクドナルドの味を求めて行列
マクドナルドがモスクワに1号店をオープンさせたのは、アメリカを中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする社会主義陣営の対立、冷戦が終結した直後だった。
1989年12月、アメリカのブッシュ大統領とソ連のゴルバチョフ書記長がマルタ会談で冷戦終結を宣言した。マクドナルドの進出は当時、“冷戦終結の象徴”とされていた。
一方でゴルバチョフ氏が進めた改革、ペレストロイカ(立て直し)の進展もあり、ソ連は国家としての統合力を失い、1991年末に解体した。
マクドナルドが営業停止を決めた理由は?
マクドナルドが3月8日に公表した声明によると、「ウクライナでの紛争とヨーロッパでの人道的危機は、罪のない人々に言いようのない苦しみを与えています」とし、ロシアによるウクライナ侵略を非難。これまでにウクライナへの資金援助や国際赤十字への支援をしてきたとした。
その上で、ロシアでの事業について関係者と意見交換をして検討してきたと明かし、「私たちのようなグローバルブランドにとっては、非常に厳しい状況であり、様々考慮すべきことがある」と決断の難しさをにじませた。
「私たちは66年間、『マクドナルドが近くにあれば、地域はより良くなる』という信念のもと、事業を展開してきました」
「ロシアでは、マクドナルドブランドに心血を注いで地域社会に貢献する6万2千人の従業員が働いています。私たちは、私たちのメニューに使用される食品を生産する地元ロシアの何百ものサプライヤーやパートナーと協力しています」
「そして私たちは、マクドナルドを頼りにしている何百万人ものロシアのお客様に毎日サービスを提供しています。マクドナルドはロシアで30年以上営業しており、850の地域社会にとって不可欠な存在となっています」
ロシアでの事業についての思いを述べた一方で、こうもつづった。
「同時に、私たちの価値観では、ウクライナで繰り広げられている不必要な人的被害を無視することはできません」
マクドナルドは、ロシアの全店舗を一時的に閉鎖し、営業を停止することを決めたが、ロシアの全ての従業員に対する給与は継続するという。今後については、「現時点では、ロシア国内の店舗をいつ再開できるかを予測することは不可能です」とした。