“いつでも安く手軽に買える”食材になっている鶏卵ですが、もともとの旬は、親鶏の体内での成熟期間が長く栄養価が高くなる2月から4月にかけてだったそうです。
卵の鮮度と安全性を保つための注意点、知っておきたい家庭での卵の正しい保存方法について、卵生産のプロ、株式会社藤野屋(大分県)の代表取締役・甲斐昇一郎さんに伺いました。
第一に賞味期限を守ることが大切
卵は比較的日持ちのする食材ですが、特に賞味期限を過ぎた生卵の場合、食中毒の原因となってしまうことがあるそうです。
「卵が原因の食中毒で最も多いのが、サルモネラ菌によるものです。日本で市販されている卵のほとんどは生で食べることを想定しているので、生産者は出荷前に殺菌消毒を行っています。ですから卵の殻からサルモネラ菌に感染することはまずないのですが、ごくまれに卵の中身が菌に侵されている場合があるので、注意が必要です」(甲斐さん)
サルモネラ菌はの主な症状として急性胃腸炎があります。サルモネラ菌は乾燥に強いものの、熱には弱いという特徴をもっているそうです。
「卵の生産者は衛生管理を徹底していますが、家庭でもいくつか注意すべき点があります。卵は必ず冷蔵庫で保存し、賞味期限内に消費してください。
生で食べる場合は、雑菌が入り込みやすくなるひび割れた卵は使わないように。高齢者や乳幼児は生卵そのものを避けたほうが賢明です。調理の際は十分に加熱して、調理後はなるべく早く食べきるようにしましょう」(甲斐さん)
卵の賞味期限の定義は「生で食べられる期限」とされています。冬場は採卵後57日以内、春・秋は25日以内、夏場は16日以内と定められています。これは食中毒を予防するため、サルモネラ菌が繁殖しない期間を基準として設定された日数だそうです。
購入したその日のうちに卵をすべてを食べきってしまうことはまれで、冷蔵庫に数日間保存しておく場合がほとんどです。卵の正しい保存方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
(1)必ず10℃以下で保存する
「卵の賞味期限の定義づけには『10℃以下で保存した状態で』という前提があります。卵は本来温度に敏感な性質をもっていますので、保存は必ず冷蔵庫で、10℃以下で保存することを心がけてください」(甲斐さん)
10℃を超える状態が数日続くと、サルモネラ菌が増殖する大きな原因になりかねないとのことです。
(2)冷蔵庫のドアポケットではなく庫内が理想的
ほとんどの冷蔵庫には卵を置くためのスペースとして扉の近くに「ドアポケット」が設けられているので、何の気なしにそこに置いてしまいがちですが、これも卵の新鮮さと安全を保つためには避けたほうが良さそうです。
「一日に何度も開け閉めを繰り返す冷蔵庫の扉部分は外気の影響を受けやすく、庫内よりも温度が高くなってしまいがちです。そのため扉のドアポケット部分は、温度変化に弱い食材である卵にとって最適な保存場所とはいえないのです。
卵をスーパーなどで購入した状態、たとえばプラスチック製の卵専用容器に入ったままの状態で、低温に保たれる冷蔵室内の奥のほうに保存することをおすすめします」(甲斐さん)
(3)とがっているほうを下にする
案外意識しない点ですが、卵を保存するときは「とがっているほうを下にしておく」ことも大切だそうです。
「卵の丸まっているほうには『気室』という空間があります。気室は下側にあると細菌が入り込みやすいという特性をもっているので、丸まっているほうを下にして保存すると、細菌が入り込む可能性が高くなってしまいます。
また、卵の殻はとがっている側が、丸みがある側より強度が高いといわれています。とがったほうを下側に向けておくほうが、ひび割れを防ぐという点からもメリットがあるといえます」(甲斐さん)
卵はほぼ毎日といっていいほど頻繁に使われ、多くの人に好まれている食材です。おいしく安全に旬の卵を味わうために、正しく保存して賞味期限を守ることを心がけましょう。
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