ウクライナ情勢が緊迫している。
ロシアのプーチン大統領は2月22日、ウクライナ東部の親ロシア派組織が名乗る「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、これらの地域のために軍の派遣も指示した。
これに対し、EUのフォンデアライエン欧州委員長とEU首脳会議のミシェル議長は「国際法とミンスク合意への露骨な違反だ」とする声明を発表。「EUは、この違法行為に関与した者に制裁で対応する」とも述べている。
この「ミンスク合意」とは一体どんなものなのか。3つのポイントで伝える。
①どんな経緯で結ばれた協定なのか?
ミンスク合意は、ウクライナ東部で2014年に勃発した紛争をめぐる停戦合意。紛争は、2014年春、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合し、その後親ロシア派武装勢力がウクライナ東部の一部地域を占拠して始まった。ここで親ロシア派勢力に支配されたのが、ドネツク、ルガンスクの2州にあたる。
停戦をめぐっては、2014年9月に一度合意されたものの、その後破棄される。2015年2月、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国による首脳会談で停戦に合意。ウクライナの隣国ベラルーシの首都ミンスクで実施され、「ミンスク合意」と呼ばれる停戦協定に署名した。
②どんな内容なのか?
ミンスク合意が定める和平プロセスは、違法な勢力の武装解除や親ロシア派勢力が掌握した支配地域とロシアとの国境管理をウクライナに戻すなどの「正常化プロセス」と、支配地域に事実上の自治権にあたる「特別な地位」を与えるとする「政治プロセス」に分かれている。
だが、このプロセスはどちらもほとんど進んでいなかった。2015年当時、犠牲者が増える中で合意が急がれ、「急ごしらえの結果、ウクライナとロシアの立場は大きく異なり、矛盾した条項が含まれている」と指摘されている。
③問題点は?
ミンスク合意は13項目から構成されているが、ロシアの意向が強く反映された項目もあり、特に「特別な地位」の付与が争点となっている。ウクライナ側はロシアによる実効支配につながるなどと警戒し、ロシアはウクライナが訴える項目の修正を拒否してきた。
プーチン氏は「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立承認にあたっても、「ウクライナが停戦合意を守っていない」などと主張している。
ロシア政治に詳しい慶應義塾大学の廣瀬陽子教授はハフポスト日本版のインタビューで、「ミンスク合意の中で特にロシアが重視しているのは、ウクライナ東部に相当高いレベルの自治を与えること」と指摘。
「『相当高いレベルの自治』に含まれるのが、外交権です。ドネツクとルガンスクは外交権を持つようになると、ウクライナ政府が『NATOに入りたい』って言い続けても、ドネツクとルガンスクが『NATOに入りたくない』と言えば不可能になる」と指摘している。