アメリカの人気司会者ジミー・キンメルさんが、トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』で、韓国のボーイズグループ・BTSの人気を新型コロナに例えた発言をしたとし、批判の声があがっている。
コロナ禍のアメリカでは、アジア系に対するヘイトクライムが増加しており、アジア人と新型コロナを関連付けることは人種差別を助長するとして、問題視されている。
どんな発言だったのか?
ジミー・キンメルさんは司会者・コメディアンで、アカデミー賞のホストを務めた経験もある。冠番組『ジミー・キンメル・ライブ!』は、ABCテレビで長年放送されているトークライブ番組で、数多くの著名人が出演。BTSも2017年に登場している。
1月28日の番組でキンメルさんは、新型コロナの変異株の登場について、90年代〜2010年代のボーイバンド(男性ボーカルグループ)の流行とその変遷に例えながら説明した。
90年代に人気を博したバックストリート・ボーイズから、2010年に結成、現在は活動休止中のワン・ダイレクションまで複数のボーイバンドをあげ、最後に「最終的には、地球上のすべての生命を破壊するほど、伝染力のあるものが現れた」と発言した。
具体的なグループ名を出したわけではないが、番組を見た人の多くはこれはBTSのことだと考えたようだ。現在、アメリカで人気のあるボーイバンドの代表格はBTSで、さらにこれまでにも、メディアなどで歴代のボーイバンドと比較されることが多かったからだ。
さらに、その1週間前にもキンメルさんは番組で、BTSの人気を新型コロナに例えていたことから、「地球上のすべての生命を破壊するほど、伝染力のあるもの」とはBTSをほのめかす意図があるのではないかと、ネット上で物議を醸している。
「どちらもとても危険です」ともコメント
1月21日の放送回では、韓国系アメリカ人の俳優アシュリー・パークさんが登場した。パークさんは、Netflixのドラマ『エミリー、パリへ行く』に出演し、歌手を目指す役として、BTSの「Dynamite」を歌唱している。パークさん自身もBTSのファンだと公言している。
番組でパークさんは、BTSのメンバーがSNSで、ドラマの歌唱シーンについて紹介するのを見た時の喜びについて語った。
「彼らがそれを投稿した後、一日中考えることも話すことも、起き上がることもできなかった」というが、後日検査を受けると、新型コロナに感染していたことが判明したという。
この話を受け、キンメルさんは「BTS熱だと思ったんですね。どちらもとても危険です。回復できて非常にラッキーですね」とコメントしていた。
ネット上ではキンメルさんの発言をめぐり、「ボーイバンドやBTSの人気を新型コロナの流行と比較することは不適切」「新型コロナとアジアにルーツをもつ人々を関連付けるのは、人種差別や外国人排除を助長する」などといった声が多数あがっている。
キンメルさんは2017年のアカデミー賞で司会を務めた際にも、アジアにルーツをもつ女性の名前を揶揄したとし、批判の声が相次いでいた。
アジア系差別に抗議したBTS
2020年はじめに新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、アメリカではアジアにルーツをもつ人々に対する人種差別的な攻撃が急増。ヘイトや差別を加速した一因として、トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「カンフルー(カンフーとインフルを組み合わせた造語)」などと呼び、アジア系へのヘイトを煽るような発言を繰り返してきたことも背景にあると指摘されている。
アメリカでは、「#StopAsianHate」をスローガンとした抗議デモが起こり、BTSも、2021年3月にヘイトクライムに対する声明を発表した。
BTSは、「理由もなく罵声を浴びせられたり、容姿を馬鹿にされたりしたこともあった」「なぜアジア人が英語で話すのかと聞かれたこともあった」などと、アジア人として差別を受けた経験を告白。そうした差別は「無力感を与え、自尊心を削ぐのに十分」であると振り返った。
その上で「人種差別に反対します。暴力を強く非難します。あなたも、私も、私たちも、尊重されるべき権利を持っています。私たちは共に立ち上がります」と表明していた。
BTSについては、ドイツのラジオ番組の司会者が「くだらないウイルスだ」と発言したこともあった。人種差別だと批判があがると、司会者は声明で「人種差別的な意図はなかった」として謝罪した。