2021年も残りあとわずか。この1年を振り返る上でやはり欠かせないのは、メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平選手の存在だろう。
投手と打者の両方で躍動しメジャーの球史に数々の金字塔を打ち立てた2021年シーズンは、アメリカン・リーグのシーズンMVPに選出されるなど、記録や成績が大きく注目を浴びた。
一方、その人柄でも日本のみならず世界の野球ファンを魅了し、深く愛された。シーズン中にハフポスト日本版編集部が伝えた中から、大谷選手の人としての魅力が滲み出たことで特に話題となったシーンの一部を改めて振り返る。
大谷翔平選手の2021年をプレイバック。歴史的なシーズンの「名場面」を振り返る【印象に残ったシーン編】はこちら。
「一流のエリート」は審判への対応も違った
まずは、MLBオールスターゲーム前のシーズン前半戦。特に6月、大谷選手は驚異的なペースでホームランを量産し、アメリカン・リーグの本塁打王争いでトップを独走していた。
日本時間の6月24日、「2番・投手」で出場した本拠地アナハイムでのサンフランシスコ・ジャイアンツ戦では「あるシーン」に大きな反響が寄せられた。
2回表の終了後、大谷選手が審判団に呼ばれる。すでに4つの三振を奪い無失点と上々の立ち上がりを見せていた大谷選手はグラブと帽子を審判に渡し、さらには自らベルトを外して何やらチェックを受ける。
審判団に対し大谷選手は嫌な顔一つ見せず、むしろ爽やかな笑顔で対応していた。
実はこの頃、MLBでは投手の粘着物質の不正使用の取り締まりが強化されていて、投手によっては審判団に不満を募らせるシーンが散見されていた。
この時の大谷選手の対応の様子をMLBとESPNの投手アナリストのロブ・フリードマン氏は「Shohei Ohtani is elite at everything.(大谷翔平はすべてにおいて一流のエリートだ)」と評していた。
審判をも味方につけた大谷選手はこの試合、勝ち星こそ付かなかったが、6回9奪三振6安打1失点と好投。
試合中に大谷選手の人柄が表れたシーンはシーズン前半だけでも何度か話題になっていて、この時すでにメジャーリーグファンの心をしっかりと掴んでいた。
初出場のオールスター。ホームランダービーでは、休憩中に“まさかの相手”から電話
大谷選手はファンのみならず、選手たちからも同じように愛されている。それを象徴するシーンを、私たちは夢の球宴の舞台で見ることができた。
初出場となったMLBオールスターゲーム。大谷選手は「1番DHかつ先発投手」として試合に出場。特別ルールが設けられ、MLB史上初めて“投手と打者、両方で出場”という快挙を果たした。
その前日に行われ盛り上がったのが、球宴の名物企画「ホームランダービー」。注目度の高さから、NHK総合で異例の生中継をしたことも記憶に新しい。
日本時間の7月13日、1回戦でワシントン・ナショナルズのフアン・ソト選手と対戦し、28-31で惜しくも敗れた。途中のタイムアウト(休憩)で大谷選手に電話が掛かってくるという一幕があり、大きな話題となった。
電話の相手は、この時怪我で戦線離脱をしていたエンゼルスのマイク・トラウト選手とロサンゼルス・ドジャース所属のアルバート・プホルス選手だったようだ。
共にメジャー屈指の強打者として名を馳せるスター選手からの電話に対し、Twitterでは「プホルスとトラウトという2人から直電がくるオオタニサン、凄すぎる」と驚きの声があがっていた。
道具は大切に。紳士的な振る舞いに称賛の嵐
シーズン後半戦。エンゼルスはプレーオフ進出を目指し、戦いに臨んでいた。大谷選手はアメリカン・リーグの本塁打王のタイトル獲得と投手としての2桁勝利に向け日々の試合に出場していた。
日本時間の7月7日のボストン・レッドソックス戦、投手として試合に出場していた大谷選手のある振る舞いが「紳士すぎる」と話題になった。
話題となったのは、2回表のマウンド。2アウト走者なしで迎えた相手の7番打者クリスチャン・アローヨ選手との対決だった。
大谷選手の投げた外角低めの変化球をアローヨ選手が打つと、打球はライト方向に飛び、その瞬間にバットが真っ二つに割れた。
結果はライトフライ。バットが折れる衝撃音に一瞬驚くような仕草を見せた大谷選手だが、次の瞬間、マウンドの右方向に落ちたバットの破片を利き手ではない左手で拾うと、なんとアローヨ選手のもとへと自ら駆け寄り手渡した。
この行動は、MLB公式Twitterで投稿されると瞬く間に反響を呼び、次のように称賛の声が寄せられた。
「he is gentlemen(彼は紳士だ)」
「This is Shohei.(これが翔平だ)」
「nice guy(ナイスガイ)」
「amazingly kind(驚くほど親切だ)」
誰よりも「味方」に優しかった大谷翔平
日本時間の7月25日に行われたミネソタ・ツインズ戦に「2番・DH」で先発出場した大谷選手。4打数2安打と結果を出したが、この日の主役は先発のパトリック・サンドバル投手だった。
2点の援護を守りながら9回1アウトまでノーヒットに抑える快投を見せたが、「ノーヒットノーラン」まであと2アウトというところで、後続の打者に2塁打を打たれ、惜しくも大記録の達成はならなかった。
マウンドを譲ってベンチに戻ったサンドバル投手がやや首をかしげるなど残念そうな表情を浮かべていると、そこにやってきたのが大谷選手だった。
サンドバル投手に駆け寄ると、持っていたペットボトルの水を彼の頭にかけるフリをする。すると、サンドバル投手からわずかに笑みがこぼれた。
肩を落とす仲間を自分なりの方法で労い、励ました。その後、大谷選手はさりげなくサンドバル投手のすぐ隣に座った。
この大谷選手の振る舞いに対し、「優しさがある」「2人の仲の良さが伝わってくる」「大谷選手らしい励まし」などと反響があった。
対戦相手や審判への振る舞いはもちろん、大谷選手はチームメイトへの優しさも忘れていなかった。
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抜粋して振り返ったのは、ほんの一部。もし仮にMVPに「人柄部門」があったなら、きっと有力候補の1人になっていただろう。
これまでの常識を覆し、メジャーリーグに新たな風を吹き込んだ大谷選手。
2022年はどんな活躍を私たちに見せてくれるのだろうか。一人の野球ファンとして、早くも来シーズンも「SHOTIME」の続きを期待してやまない。