コンドームの付け方、性感染症の症状が出た性器、生理ナプキンの捨て方…。
性に関することに特化したイラストを、無料で使用できる素材サイト「性教育いらすと」が公開されました。
「待ってました」「ありがたすぎる」「本当に助かる」ーー。
性教育に関わるアクティビストや医療従事者、教員などから、サイトのオープンを歓迎する声が上がっています。
制作したのは、グラフィックデザイナーの佐藤ちとさん(@sato_chito_)。なぜサイトを立ち上げようと思い立ったのでしょうか。サイトに込めた思いを佐藤さんに聞きました。
性を知ることで「選択肢が広がる」
佐藤さんが性教育に関心を持つようになったのは大学生の頃。性にまつわるイベントに参加したり、性教育関連の本を読んだりしたことがきっかけでした。
「私自身、もともとPMS(月経前症候群)の症状が重く、生理期間中は地獄でした。性教育のイベントや本で低用量ピルのことを知り、婦人科を受診するようになったことで、生理中も普段と変わらない生活を送れるようになりました。知識がないがゆえに辛い状況が続いてしまいかねないこと、性について知ることで正しく対処でき、選択肢が広がるということを実感しました」(佐藤さん)
性に関するイベントでアクティビストや学校教員、医療従事者らと出会い、佐藤さんは性にまつわるイラスト制作の依頼を個人で受けるようになりました。
生理用品、コンドーム、子宮…。数々の要望を聞く中で、佐藤さんは「求められるイラストがいつも似通っている」と気づき、「誰でも無料で使える素材イラストがあったらいいんじゃないか」と思い立ちました。
「無料のイラスト素材サイトはたくさんありますが、性に関するイラストに特化したものはなかなか見当たりません。さらに、ジェンダーに関しては、例えば『女の子はピンク、男の子は青』のように性別で色を分けているイラストが多く、性教育の講演では使いにくいという声も聞きました。こうした意見をもとに、『かゆいところに手が届く』イラストを描こうと意識しました」
避妊具、生理、LGBTQ +、ボディポジティブ、ルッキズムなど、サイトでは30を超えるカテゴリーを設置。性感染症の症状や性器といった、描く上で正確な医療知識が必要なものは、泌尿器科医と助産師の監修のもと制作したといいます。
「恥ずかしいものじゃない」と伝える
同性カップルの結婚や、男性の痴漢被害を描いたイラストもあり、多様性やジェンダーバイアスの面にも心を配りました。
性教育を「いやらしいもの」と捉える偏見は今もあるように感じる、という佐藤さん。「性教育って恥ずかしいものじゃないんだよとイラストを通じて伝えられるよう、恥ずかしさを感じさせずに温かみのある描き方を心がけました」と話します。
学校現場など、フルカラーでの印刷がしにくいケースを想定し、モノクロ印刷でも見やすいよう明度の差をつけるなどの工夫もしました。
サイトの制作にあたって、佐藤さんは3月からクラウドファンディングを実施。約1か月間で、281人の支援者から計約180万円が集まりました。資金は、サイトの制作費や維持費、資料代に充てるといいます。
今後はSNSを活用してイラストのリクエストを募り、その結果を踏まえてサイトをさらに充実させていく予定です。
「性の知識を広めたいという思いを持つ人たちが発信しやすくなるよう、イラストが役に立てればうれしいです」
海外から利用の問い合わせもあることから、佐藤さんは英語サイトの制作も計画しています。