トヨタ自動車の豊田章男社長は12月14日、東京都内で電気自動車(EV)に関する記者会見を開いた。
豊田社長はEVの販売台数などで新しい目標を発表。EVシフトの強化を印象づけた。その後の記者との質疑応答で豊田社長のEVに対するスタンスの変化が垣間見えた場面があった。
それは、司会から指名されたモータージャーナリストが「まだ社長の本心が聞けていない」と切り出し、「社長にとってEVは好きなのか?嫌いなのか?」と迫った時のこと。
「素晴らしい質問ですね」と笑ってみせた豊田社長は「あえて言うなら、今までのトヨタのEVは興味がなかった。これから造るEVには興味があるというのが答えだ」と述べた。
一体、どういう心境の変化があったのか。
トヨタは「トヨタ」と「レクサス」の二つのブランドを持ち、それぞれが独自の個性を追求しているメーカーだ。そして、豊田社長も世界で年間約1000万台を販売する経営者としての顔と、自動車レースに参戦するドライバー「モリゾウ」としての顔を持つ。
質疑応答で明らかにしたのは、EVになることで「トヨタらしさ」や「レクサスらしさ」が失われ、コモディティー化(同質化)することへの懸念だった。豊田社長は「ビジネス的には応援するけど、モリゾウとしてはどうなの?」という思いが以前はあったと打ち明けた。
一方で、トヨタも手をこまぬいていたわけではない。プラットフォーム(車台)などを共通化する新たな開発手法「TNGA」を導入。2015年の4代目「プリウス」を皮切りに多くの車種の開発で採用してきた。
これにより、基本性能が向上し、商品力のある車を造れるように。さらに、速さや耐久性が求められるレースで得た知見なども市販車の開発の現場で生かしている。
より安全で、より速く、より楽しめる車を造れている自負が今はあるからこそ、豊田社長は「EVも含めて(これからの)トヨタの車には期待している」と述べたのだった。