東京都の小池百合子知事は12月7日、LGBTQのカップルの関係を公的に認める「同性パートナーシップ制度」を2022年度に導入すると発表した。
パートナーシップ制度は現在、130を超える自治体で設けられており、東京都で導入されると、人口カバー率は全国で約50%となるとみられる。
都民からは「LGBTQがたくさん集まる東京で導入されるのは、大きな意義がある」「同性婚の法制化に向けた、さらなる一歩」との声が上がっている。
パートナーシップ制度は、自治体がLGBTQのカップルを公的に認める制度。当事者が、従来できなかった公営住宅への入居や、公立病院での面会や手術の同意などが可能になると期待される。一方、法的拘束力はないなど、課題も多い。
同性婚の法制化に向けて活動する団体「Marriage For All Japan ー結婚の自由をすべての人に」によると、21年12月時点で導入しているのは138自治体。都道府県では大阪府や佐賀県など5自治体で利用でき、10月11日時点の人口カバー率は41.1%に上る。制度を利用したカップルは、9月30日時点で2277組という。
東京で導入、その意義は?
東京都の制度導入について、ゲイとしてライター活動などを行う一般社団法人fairの代表理事、松岡宗嗣さん(27)は、「パートナーシップ制度は当事者の存在を可視化し、肯定する重要な制度。とても嬉しい」と語る。「日本の首都が導入することで、パートナーシップ制度が今後さらに日本全体へと広がっていく一つの節目になると思う。同性婚の法制化に向けて大きな転換点になるかもしれない」と期待を込める。
一方、「もっと早く、導入してほしかった」との思いもある。
都では2018年に、性的指向や性自認を理由とした差別の禁止を定めた条例が成立したが、昨年の東京都知事選では、小池都知事はパートナーシップ制度の導入に慎重な姿勢を見せるなど、矛盾も感じるからだ。
松岡さんは「せっかく都全体でパートナーシップ制度ができるので、パートナーが病気やけがをした際の立ち合いなど、しっかりと効力を発揮できるよう、『なぜパートナーシップ制度が必要なのか』、現場の職員への研修や協力機関との連携など土台作りにも力を入れてほしい。同時に、パートナーシップ制度があれば課題が解決するわけではないため、やはり早急な同性婚の法制化が必要」と話す。
東京に移り住む当事者が多いからこそ
10年間交際しているゲイのパートナーと一緒に、10月に東京都に引っ越してきた勝山こうへいさん(39)は「東京は当事者コミュニティも多く、たくさんの当事者が集う場所。ここで制度が導入されるのは、LGBTQにとって大きな支えになると思う」と話す。
現在住んでいるのは世田谷区。パートナーシップ制度を利用したくて選んだ。
それまでも同様の制度のある自治体に住んでいたが、コミュニティーが狭かったため、セクシュアリティがばれることを恐れ、申請できなかった。
地方に生きにくさを感じ、「隠さずに自由に生きたい」との思いが芽生えた。人が多くて紛れられるのではと感じ、東京に惹かれた。
「自分のような思いから、東京に引っ越す当事者は多い」
制度が導入されることで、より生きやすくなることを期待しつつ、胸が少し痛む自分もいる。
「本当は、都心も地方も関係なく、みんなが自分らしく生きられるのが理想。そのためにももっと多くの土地で、パートナーシップ制度が広がってほしい」