アメリカの人気モデル、ベラ・ハディッドが、有名ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」の広告塔として起用された。
2015年に初めてモデルを務め、以降複数回にわたり広告に登場してきたハディッドだが、この数年は関わりがなかった。その背景には、同ブランドでモデルに対する性的な嫌がらせが横行していたことがあると考えられている。
なぜ、ハディッドは数年ぶりにモデルとして復帰したのか?
エンジェル廃止で、新プロジェクトが発足
ヴィクトリアズ・シークレットといえば、これまで「エンジェル」と呼ばれるスーパーモデルの起用で有名だった。しかし、エンジェルたちはスリムな体型の女性が中心で、かつマーケティングの手法においても性差別的であるとの批判があがり、ブランドの再構築のために廃止された。2021年6月からは、「The VS Collective」というキャンペーンが立ち上がった。
ハディッドはこの新プロジェクトのモデルとして起用。他には、ミーガン・ラピノーや大坂なおみ、ヴァレンティーナ・サンパイオなど、多様性と包括性を重視した様々な経歴を持った人々が選ばれている。
「下着に身を包んでいた時、パワフルに感じられたことはなかった」
ハディッドはファッション誌マリ・クレールのインタビューに対し、モデルとして復帰することを決断した理由はブランドの「大きな変化」を感じたからだと語っている。
現在の理事会メンバー7人のうち6人は女性であり、またモデルの撮影の際にも新しい規約が導入されたという。
ハディッドはかつて、歌手のリアーナが手がける下着ブランドのファッションショーに出演した時に、「私は他のランジェリーブランドのショーにも出演していたけど、下着に身を包んでいた時、パワフルに感じられたことはなかった」と明かし、ヴィクトリアズ・シークレットを暗に批判したことがあった。
また2020年にはNew York Timesが、2018年に当時同ブランドの幹部だったエド・ラゼックが、ファッションショーの準備中にモデルに対して性的嫌がらせを行っていたと報じた。その被害者の中にはハディッドの名前もあり、証言によると、ラゼックはハディッドに対し、「ショーツは忘れていけ」などと言い、他にも不適切な言葉を投げかけたという。
Peopleによると、ハディッドが最後に同ブランドのファッションショーに出演したのも2018年だ。
インタビューによると、復帰に向けた最初の打ち合わせまでにおよそ1年半かかったという。このブランドに関わることを再び前向きに考えられるようになるまでには時間が必要だったからだ。
モデルの「境界線」をめぐる新たな撮影ルール
契約には、これまでになかった新しいルールも盛り込まれることになった。「やりたくないことは何もする必要はない」「見せたくない体の部分を見せなくてもいい」。下着ブランドのモデルは身体の露出の範囲が多くなるが、それについて自ら選ぶことができる。
ハディッドによると、こうした規約は他のファッションの撮影などでも見られないという。
「これは私たち女性にとって、とても重要です。こうした撮影セットに足を踏み入れると、私たちは自分の境界線を失ってしまうことがあります。そして、自分たちの境界線を受け入れてもらえない。
だから、自分の身体や自分自身をコントロールする力は誰もが持っていて、もし何か懸念があればはっきりと伝えていいと示してくれるのは、とても重要なこと」
ハディッドは、ヴィクトリアズ・シークレットに戻ってくることは、失った「私自身の力を取り戻すこと」だと語っている。