世界各地で新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の確認が相次ぐ中、その命名の経緯について、憶測を呼んでいる。
順番通りならば選ばれるはずの2つのギリシャ文字が飛ばされたためだ。
「ニュー」と「クサイ」が飛ばされる
新たな変異株を南アフリカの保健当局がWHO(世界保健機関)に報告したのが11月24日。
WHOは26日、この変異株を「懸念される変異株」(VOC)に指定し、「オミクロン」と名付けた。
オミクロンは、24文字あるギリシャ語のアルファベットの15番目。
直近の変異株は12番目の「ミュー」だった。次に来る13番目の「ニュー」、14番目の「クサイ」の2文字が飛ばされた形だ。
WHOは当初、初めて確認された国や地域の名前を使って変異株の名前を呼んでいたが、2021年5月からギリシャ語のアルファベットを使うことを発表。
名前が使われた国や地域に対する、差別や偏見を避けるためだ。
これまで、1番目の「アルファ」から12番目の「ミュー」まで使用されていた。
呼んだ憶測
すると、2文字が飛ばされたことにSNS上で指摘が広がった。
「クサイ」の英語表記が、中国の習近平・国家主席の姓の英語表記「Xi」と同じであるため、「中国への配慮では」という憶測も呼んだ。
アメリカの対中強硬派として知られるテッド・クルーズ上院議員(共和党)は27日、自身のTwitterで「WHOが中国共産党をこれほど恐れているなら、中国が次にパンデミックを隠匿しようとした際、どのように信用できるでしょうか」と投稿した。
WHO「攻撃の原因を避けるため」
WHOはこうした指摘を受けて、複数のメディアに命名の理由を明らかにした。
AP通信によると、ニュー(英語表記でnu)は「new」と混同されやすく、クサイは一般的な姓であるため使用しなかったと説明。
「病気に名前をつけるための最善の方法は、あらゆる文化、社会、国家、地域や専門的または民族的なグループへの攻撃の原因となることを避けることだと示唆している」としたという。
AP通信によると、こうした考えはWHOが2015年5月に公表した文書にも示されている。