(朝日新聞社提供)
ジョギング中の黒人を射殺、裁判に注目集まる 白人3人側は無罪主張
米南部ジョージア州で昨年2月、ジョギングをしていた黒人青年が銃で撃たれて死亡した事件の裁判が、注目を集めている。白人3人が殺人罪で起訴されたが、弁護側は無罪を主張している。裁判は23日に結審し、陪審団が今月中にも評決を言い渡す予定だ。
起訴状によると、元警官のグレゴリー・マクマイケル(65)と息子で元沿岸警備隊員のトラビス(35)、親子の隣人のウィリアム・ブライアン(52)の3被告は昨年2月23日昼、黒人のアマド・オーブリーさん(当時25)をピックアップトラックで追いかけ、拳銃で撃って殺害したとされる。
事件が全米で報じられるようになったのは、発生から2カ月以上が経ってからだった。地元ラジオ局が昨年5月5日、事件当時の動画を独自に入手し、ユーチューブに公開。そこには、オーブリーさんが車から走って逃げた末に、トラビス被告から突然撃たれる様子が記録されていた。
動画はソーシャルメディアに転載され、すぐ拡散された。地元の警察や検察がそれまでに3人の刑事責任を追及していなかったことも問題視され、州捜査当局が捜査を引き継いだ。
先月始まった裁判は、ブラック・ライブズ・マター(BLM)関連のデモ隊を射殺したとして起訴された白人=19日に無罪評決=の裁判とともに大きな関心を集め、法廷の中継も含めて連日報じられている。争点は、3人の行為が正当だったかどうかだ。
親子の弁護側は、現場周辺で当時犯罪が増えており、オーブリーさんが窃盗犯だと確認していたと主張。追いかけたのは私人逮捕をするためで、銃撃は命の危険を感じたことによる正当防衛だと、それぞれ訴えた。ブライアン被告の弁護側は、事件の様子を撮影していただけで、実際にオーブリーさんに危害を加えていないことを強調した。
検察側は、オーブリーさんが近くの敷地内に立ち入ったことを認めつつ、何かを盗んだ証拠はないと指摘。「通りを走っている黒人だ、という理由で3人はオーブリーさんへの攻撃を決めた」「自分たちで物事を始めておいて、正当防衛を主張することはできない」と正当性を否定した。
12人の陪審員は23日から評議を始め、全員の意見を一致させた上で、被告に有罪か、無罪かを言い渡す。有罪になった場合は終身刑の可能性もありうる。
(朝日新聞デジタル 2021年11月24日 09時54分)
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