中国・江西省で、新型コロナウイルス感染症対策のために隔離措置となったところ、自宅に残されたペットのコーギー犬が消毒作業員に撲殺される事件があった。
地元当局は事実を認めた上で「作業員に謝罪させ、飼い主の許しを得た」と発表したが、飼い主は被害を訴えるネット投稿について「職場から削除を迫られた」などとしている。
■発表で殺害認める
当局の発表や現地メディア報道によると、中国江西省上饒(じょうじょう)市に住む女性の「傅(フー)」さんは、地区に新型コロナウイルスの感染者が出た影響で、11月12日夜に隔離のため、指定されたホテルへ移動するよう通知を受けた。
しかし、5年の時をともにしたペットのコーギー犬は同伴を許されなかったという。
隔離中、傅さんを含む住民の家では、作業員が立ち入って消毒作業を行っていた。しかし、家の防犯カメラの映像では、防護服を着た作業員が部屋に立ち入った後、手にしたバール状の工具でコーギー犬の頭部を叩く様子が記録されていた。映像では、コーギー犬は驚いた様子で画面外へ逃げていった。
傅さんはSNS・ウェイボーで「私の犬です!」として消息を求めていた。
地元当局がこの件について発表したのは11月14日。コーギー犬について「無害化処置」を実施したとして、殺害を認めた。その上で作業員に対しては傅さんに謝罪させ、担当業務から外したとした。発表ではさらに「飼い主の許しを得た」とも綴っている。
しかし、この件に対して傅さんは声を上げることを許されていない。被害を訴える投稿は自身の職場から削除するよう迫られたと訴えていたが、それもすでに消されている。傅さんを支援していたネットユーザーも「知らない人が電話をかけてきて、私の本名と個人情報を口にした。ネットの投稿を削除しろといってきた。あなたは誰だと聞いたら、普通の市民だと名乗った」と脅迫されたことを明かしている。
傅さんのSNSアカウントからは、コーギー犬の被害に関する投稿は消えている。残されたのは事件と関係のない過去の投稿ばかりだが、愛犬家たちは返信欄で「ワンちゃんは幸せだったはず。あなたはよくやった、勇敢だ」「なんと慰めれば良いかわからない」「いつ同じことは自分の身に起きるか分からない。声をあげるべきだ」などと連帯を表明している。
■ペットの扱いには差も
中国ではデルタ株の感染拡大に対して、検査と隔離をセットにした厳格な防疫措置が取られている。直近では東北部の遼寧省・大連市などで複数の感染例が報告されている。
隔離の際、ペットをどう扱うかという問題については、地域ごとに対応にばらつきがある。北京紙「新京報」のまとめによると、北京市の一部地区ではペットの世話のために自宅内隔離を一名まで認める決定がされた。上海市では、隔離の際にペットの同伴を認めた例もあったという。
一方で、現地メディアによると、東北部・ハルビン市では飼い主とともに陽性判定を受けた猫3匹が「安楽死」させられた事例もある。