「ああいうやつにはなるな」
女性に対する性暴力を防ぐため、男性に行動を見直すよう呼びかけるキャンペーン動画「#Don’t Be That Guy」を、スコットランド警察が制作・公開した。
動画で、男性たちはカメラを見つめながらこう問いかける。
「女の子を『ドール(お人形さん)』と呼んだことはない?」
「道ですれ違いざまに、女性に口笛を吹いたことは?」
ある男性が「女性に『いいね...』と褒めたことはある?」と尋ねると、別の男性が「なぜ感謝の言葉を言われないのか不思議に思ったことはない?」と畳みかける。
「ディナーをおごった後、その女性は自分に借りがあるように感じたことはない?」
「酒に酔った女性をタクシーに乗せて、自宅まで連れて帰ったことは?」
バスの中で女性をジロジロ見る、迷惑メールを送りつけるといった行為も挙げている。
続けて「ほとんどの男性は鏡を見ず、問題を直視していない」と指摘し、こう締めくくる。
「でもこの問題は、私たちのすぐ目の前にある。性暴力は、あなたが思うよりずっと前から始まっている。“ああいうやつ”にはなるな」
動画はSNS上で280万回以上再生された。些細なこととして受け流されがちな男性の日常の行動が、女性に脅威を感じさせ、より大きな暴力につながる恐れがあることを示している。
「女性が行動変えて解決」の弊害
キャンペーンは、イギリスで女性の安全に対する懸念が高まっていることを背景に打ち出された。
同国では3月、33歳の女性が男性の警察官から性的暴行を受けた後に殺害される事件が発生した。事件後、女性が被害に遭わないよう自分で身を守る必要性を強調するような警察側の対応が目立った。
「夜道を一人で歩かないように」
「スカートを履かないように」
「ヘッドフォンを着けながら外出しないように」
性暴力が起きた時、罪に問われるべきは当然、加害者の行為だ。それでも、性暴力被害に遭わないよう女性に対して服装や行動を制限するよう呼びかけたり、事件当時の被害者の行動を責めたりする誤った対応はこれまでも繰り返されてきた。
女性への暴力根絶を目指す団体のネットワーク「 End Violence Against Women Coalition」のアンドレア・サイモン氏は、ガーディアンのインタビューで、「女性に対する暴力は、『女性が自分の安全を確保するために行動を変えることで解決する』という、女性にとって負担の大きい問題として捉えられることがあまりにも多い」と指摘する。「問題は、それは効果がなく、被害者を疲弊させ、不可能だということだけではありません。『自分の身に起こったことは被害者本人の責任である』という、有害で誤った考えを永続させるものです」
その上でサイモン氏は、女性に対する暴力が日常の一部として容認されないために、「男性たちの態度と行動を問題提起するような、警察や政府によるキャンペーンを増やす必要がある」と提言する。