新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた人たちへの支援策をめぐり、自民党と公明党は11月9日、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり現金10万円を支給することで合意した。
自民党は衆院選の選挙公約で、「非正規雇用者・女性・子育て世帯・学生をはじめ、コロナでお困りの皆様への経済的支援を行います」と盛り込んでいた。
今回、自公の両幹事長が10万円の給付対象として一致したのは「住民税が非課税となっている世帯」。この住民税非課税世帯とは、どのような人が対象となるのだろうか。
①生活保護を受けている人
②障がい者、未成年者、ひとり親、寡婦(夫)で、前年の合計所得が135万円以下(所得が給与所得のみであれば、給与収入が204万4000円未満)の人
③前年の合計所得金額が、各自治体が定める額以下の場合
(※港区では、『35万円 ×(本人+被扶養者の人数)+(被扶養者がいれば21万円)+ 10万円』以下の所得の人。単身世帯であれば45万円以下となる。自分の住む自治体の条件をご確認ください)
この現金10万円給付の「基準」に対し、SNS上では11月9日、「住民税非課税世帯」がトレンド入りし、様々な意見が上がった。
「その条件からこぼれた苦しい人はどうしたらいいの?」
「住民税非課税世帯じゃなくても困っている人が大勢いるんだよ!」
「10万円給付の対象が狭すぎる」
「ワーキングプアにも給付金出すと思ってたのにこれは公約違反では」
自民、公明両党はこのほか、18歳以下を対象に現金とクーポン合わせて10万円相当を給付することでも合意。協議していた所得制限については11月10日、年収960万円の上限を設けることで一致した。
「生活の安定につながる政策の実現を」
この政府の支援策について、若者の労働問題や貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE」事務局長の渡辺寛人さんはこう指摘する。
このコロナ禍で貧困が拡大している中で、支援策が子どもや住民税非課税世帯などに限定して行われることで、社会の分断が広がってしまう可能性がある。
私たちに労働相談に来る方の中でも、住民税非課税世帯にあてはまらないけれども、新型コロナの感染拡大で仕事が減り、収入が不安定化し、2つや3つの仕事を掛け持ちしながらなんとか生活している方や、親の収入が減った影響で苦しんでいる大学生たちがいます。
さらに、一時的な給付金では生活困窮者への対策としては効果は限定的で、住宅や学費、ライフラインへの補助など、生活の安定につながる政策を実現していただきたい。
お金の専門家「住民票を移していれば、一人暮らしでも一つの世帯」
今回、現金10万円給付の対象となるのは「住民税非課税世帯」だ。申請しなくても受け取れる「プッシュ型」で給付される見込みだが、自分が対象になるのかどうかを判断する上で注意すべき点を、お金の専門家として活動する横川楓さんに聞いた。
厚生労働省の定義によれば、“世帯”とは「住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、もしくは独立して生計を営む単身者をいう」とされています。
世帯というと家族単位を想像する方も多いと思いますが、住民票を移していれば、一人暮らしでも一つの世帯です。昨年実施された現金給付10万円の特別定額給付金も、大学生や専門学生などの学生であっても住民票を移して一人暮らしをしているのであれば単身世帯となり、自身が世帯主として申請対象でした。 つまり、今回も前年度のアルバイト収入などによる所得が非課税世帯の条件に当てはまっていれば、一人暮らしの学生であっても対象となる可能性があります。
一方で、2019年に消費税の引き上げに伴って行われたプレミアム商品券事業では、住民税非課税者であっても、「住民税が課税されている方に扶養されている方(生計を同一にする配偶者、扶養親族等)を除く」という条件がありました。 一人暮らしで世帯主となっていても親の扶養に入っているというケースもあります。 今回の給付についても、今後特設ページなどで改めて細かい条件を確認する必要がありそうです。
また、同じ住所に家族数人で暮らしている場合でも、一つの世帯の場合もあれば、同居していても家族間で世帯分離をしていれば複数の世帯となっている場合もあります。
金額的な側面のほか、世帯の形によって条件に当てはまるかどうかも注意が必要です。