中国の女子テニス選手で、過去にウィンブルドンと全仏オープンを制した彭帥(ほう・すい)選手がSNSで、中国の前副首相・張高麗(ちょう・こうらい)氏と不倫関係にあったことを告発した。
すでに削除されている文章では、張氏が複数回にわたり関係を迫った後「遊ぶだけ遊んだからいらなくなった」とされたと主張。証拠は残せなかったものの、「無駄な足掻きになったとしても事実を伝える」と綴っている。
■「無駄な足掻きになっても」
彭さんは2014年の全仏オープン女子ダブルスで優勝するなどし、ダブルスの世界ランキング1位にも輝いたことのある女子テニス選手。かたや、張高麗氏は2012年に共産党最高指導部の中央政治局常務委員入りし、2013年から副首相を務めた。
彭さんの告発した内容によると、2人は張氏が天津市で勤務していた頃に性的な関係を持った。その後、張氏が昇格して北京入りすると連絡は途絶えたが、引退後に再び連絡があったという。一緒にテニスをした後、妻のいる自宅へ呼ばれ、関係を持つよう迫られた。この時、彭さんは求めを拒否し「ずっと泣いていました」という。
告発によると、その後、張氏は突然連絡を絶ったとみられ「遊ぶだけ遊んだからいらなくなった」と非難している。
他にも彭さんは、張氏に「山東省勤務時代(2001年〜2007年)に知り合っていたら離婚できたが、この地位では無理だ」「来世は20歳と18歳で出会うことを望んでいる」などと話されたと訴えている。
彭さんは「あなたはいつも、私が証拠を残すことを恐れていましたね。録音やビデオなどの証拠はありません」としつつ、「無駄な足掻きになったとしてもあなたとの事実を伝える」と綴っている。
党の最高指導部メンバーを名指しする形での告発は極めて異例と言える。
■政治的に敏感な時期
この文章は中国のSNSからはすでに削除され、「ウェイボー」では彭帥さんのアカウントも同様に見られなくなっているとみられる。
中国では、共産党の最高指導機関が開催する重要会議「六中全会」を11月8日に控える。当局としては、党の権威に傷がつきかねない情報に神経を尖らせているとみられる。
■告発、広がらない場合も
中国では、SNSを介して性的被害などを訴える「#Me too」に連なる動きが出ている。中国IT大手・アリババでは8月、女性社員が、出張で取引先に大量の酒を飲まされ酩酊した後、男性上司らに暴行を受けたと告発。その結果、上司は社から永久追放とされた(地元検察によると、その後逮捕はされず、15日間の勾留処分となった)。
さらに同月にはウェイボーで、小学生の頃に当時の校長から下半身や胸を触られるなどの被害にあったと女性が実名で告発。訴えはネットで拡散され、元校長(67)は公安当局に拘束された。
一方で、国営放送・CCTVのアナウンサーによるセクハラ被害を訴えた女性の場合、ウェイボーの使用をブロックされる(BBC)など、訴えの相手によっては十分に広まらないケースもある。