「同性婚はいつ実現するのでしょうか」(20〜29歳、男性同性愛者)
こんな声が若者から寄せられた。
ハフポスト日本版と「NO YOUTH NO JAPAN」が10月31日投開票の衆議院選に先立って実施したアンケートで「政治積極的に取り組んでほしいと思う社会課題」を尋ねたところ、30歳未満の若者世代が「LGBTQ」を重要な争点の一つとして見ていることが浮かび上がった。
「セクシュアルマイノリティへの差別を禁止する法律がない中で、理解増進などと言っている間も、当事者は困難に直面して日々歳を重ねています」(20〜29歳、女性)
同性同士で結婚をする自由や性的マイノリティの雇用などが法で守られない状況が日本で続く中、国会に席を置く政党はLGBTQの人権問題をどう考えているのか。
ハフポスト日本版と「NO YOUTH NO JAPAN」は、「同性婚の法制化」「性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律の制定」「性同一性障害特例法の改正」の3つの政策について、9政党(自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党、社会民主党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)にアンケートを行った。各党の回答を紹介する。
■同性婚:自民党と公明党以外は賛成
戸籍や住民票上の性別が同じ同士のカップルの「同性婚」の法制化について質問したところ、自民と公明以外のすべての党が「賛成」と回答した。与野党間の考えの違いが明確になった。
「その他」と回答した自民と公明は、「現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されておりません」(自民)、「(性的マイノリティへの理解の増進を目的とした)理解増進法案を法律として成立させ、その上で、同性婚についても必要な法整備について議論を進めていきます」(公明)とそれぞれ考えを示した。
法制化に消極的な与党とは対照的に、野党側は「速やかに法制化すべき」(立民)、「できる限り早く」(維新)などと、法制化が緊急の問題であると認識している姿勢が目立った。
れいわは法整備への取り組み方について「憲法改正は不要」とし、「戸籍法や民法の改正で直ちに同性婚が可能な状況を整える」と答えた。立民・共産・社民の3党は、同性同士でも法的な結婚ができるよう民法の一部を改正する「婚姻平等法案」を2019年に衆議院に提出している。
同性婚の実現をめぐっては、2019年に全国の同性カップルらが国を相手に一斉提訴。2021年3月には札幌地方裁判所が「同性同士の婚姻を認めないのは憲法違反」として、初めて違憲判決を下した。現在、北海道・東京・愛知・大阪・福岡の5つの地裁と高裁で裁判が続いている。
■差別禁止法:自民党のみ「その他」
「性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律の制定をどう考えるか」という質問に対しては、自民以外の党が「賛成」と答えた。
同性婚に賛成と答えたほとんどの党が差別を禁止する法律の制定も支持し、同様に急務であるという認識がうかがえた。
「すぐにでもLGBT平等法を制定し、社会のあらゆる場面で性的マイノリティーの権利保障と理解促進を図ります」(共産)
(編注:「LGBT平等法」とは性的マイノリティへの差別を禁止する法律のこと)「理解促進だけではなく、差別禁止とし、法律というルールで守る必要がある」(れいわ)
「性的少数派の方々の基本的人権を尊重するために早期法案化を実現することが肝要です」(N党)
「その他」と回答した自民は、「広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の速やかな制定を実現する」と補足した。
自民が説明するような「理解の増進を目的とした議員立法」は、超党派の議員連盟が2021年5月にまとめた「理解増進法案」がある。この法案には野党や当事者団体らが求めていた「差別の禁止」は明記されていないが、与野党の交渉を経て「差別は許されないもの」という文言が盛り込まれた。
しかしその後、法案の了承をめぐって自民内で反発があり議論が紛糾。党の会合で議員が差別発言をしたことも報道され、当時開かれていた国会への法案提出は事実上断念された。
「賛成」と回答した公明も、「与野党で合意に至った理解増進法案の早期実現に向けて取り組む」とした。
日本はG7で唯一、LGBTQに関する差別を禁止する法律がない。2020年に発表された性的マイノリティについての意識調査では、全国で9割近くが性的マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例の制定に賛成している。
「性同一性障害特例法」:6党が見直しに「賛成」
トランスジェンダー当事者(生まれた時に割り当てられた性別と本人が認識する性別が異なる人)が戸籍上の性別を変更する場合、「性同一性障害特例法」に定められた5つの要件を満たす必要がある。
この中には「手術要件」(生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること)や「子なし要件」(現に未成年の子どもがいないこと)などが含まれ、当事者への人権侵害や経済的負担が指摘されている。
また、世界保健機関(WHO)が国際疾病分類改訂版「ICD-11」(2022年発効予定)で「性同一性障害」を精神疾患の分類から除外しているなどの観点からも、国内外で見直しの議論が高まっている。
ハフポスト日本版が上記の背景を記した上で現行法の改正について尋ねたところ、自民、維新、国民の3党が「その他」、立民、公明、共産、社民、れいわ、N党の6党が「賛成」と答えた。
「賛成」と答えた党に対し検討している改正内容について聞くと、「子なし要件」「生殖不能要件」「外見要件」の撤廃の他、ホルモン療法の保険適用化などもあげられた。
・いわゆる「子なし要件」(現に未成年の子がいないこと)、「生殖不能要件」(生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること)、外観要件(性別変更後の性の性器に係る部分に近似する外観を備えていること)の見直しをめざします(立民)
・ホルモン療法の保険適用化など、当事者が抱える困難の解消を図ります(公明)
・本人の性自認のあり方を重視し尊重する「人権モデル」へ移行する方向で検討します。その際、『子なし要件』、『手術要件』の撤廃も含めて検討します(共産)
「その他」と答えた3党は法改正について、国会の場や党として「議論をする」にとどめた。
・当事者や関係者の中で、様々なご意見があることは承知しております。そのようなご意見を踏まえ、国会で議論されることと承知しております(自民)
・まず解決のため専門的に議論をする会議体を設置する(維新)
・党として議論を行っていきたいと思います(国民)