老朽化が問題となっているマンホールの蓋の写真を、市民の力を借りて収集する企画がSNS上で話題になっている。
企画を運営するのはNPO「Whole Earth Foundation」(WEF、シンガポール)とマンホール蓋などを製造する日本鋳鉄管。東京23区のマンホール蓋が対象で、専用のスマートフォンアプリで写真を撮影して投稿する。総額100万円以上の賞金が用意されており、いわば市民参加型のゲームイベントだ。
イベントは「第3回 #マンホール聖戦 東京23区コンプ祭り」で、10月31日まで開催されている。23区全域でマンホール蓋は約47万カ所あるが、危険な場所を除く約41万カ所が対象という。渋谷区は既にコンプリート(完了)している。Twitter上では「誰でもインフラデータ収集の一端を担えるゲーム」「社会貢献にもなる素敵な企画」と評価する声が上がっている。
背景には、日本のインフラの老朽化がある。日本グラウンドマンホール工業会(東京)によると、全国の約1500万カ所のマンホール蓋のうち、30年以上経過したものが約300万カ所あると推計されている。放置しておけばスリップ事故などにつながる恐れがあるが、自治体が限られた人員と予算の中で更新すべきマンホール蓋を全て把握するのは難しい。
この事態を踏まえ、WEFは、お散歩マンホールアクションゲームアプリ「鉄とコンクリートの守り人」を開発。8月に渋谷区全域を対象に実証実験したところ、3日間で区内約1万カ所の全てのマンホール蓋の写真を収集することができたという。
こうした取り組みは「シビックテック」と呼ばれる。シビック(市民)とテック(テクノロジー)を組み合わせた造語で、市民がITなどのテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指すのが特徴だ。
WEFは「マンホールの異常を事前に察知できれば、更新の優先順位が分かり、 重大事故を未然に防ぐことができる」と意義を説明。日本鋳鉄管は「マンホールの適切なタイミングでの交換につながり、より安心・安全な社会に向けての一歩になればいい思う」としている。