小学3年生頃、クラスメイトの男の子にスカートをめくられお尻を触られた。その時のことは、20年経った今も鮮明に覚えているーー。
そんな実体験を描いた漫画に、反響が広がっている。作者は、育児や日常にまつわるイラストをTwitterで発信している、まみ(@aimika_mama)さん。
全4ページの漫画を発表すると、「似た体験をしたことがある」「あの時の自分が救われた気がする」など、共感の声が寄せられた。
クラスメイトにお尻を触られた話
小学3年生の頃、クラスメイトと他愛のない話をしていた時のことだった。
「おしりタ〜ッチ!!」
背後からやってきた男の子に、突然お尻を触られた。しかも、スカートをめくられて。
男の子たちが無邪気にはしゃぐ傍らで、まみさんの頬には、ぽろぽろと涙が伝った。
一緒にいた女の子は心配する声をかけてくれ、涙するまみさんを見ると先生を呼んできた。
先生に叱られ、お尻を触った男の子は渋々謝ったという。
「謝ってるから許してあげられる?」と先生は言うけれど、何も答えることができなかった。
「ダメだなこりゃ」とため息混じりに言った先生の一言は、今もはっきりと覚えている。
まみさんはパニックに陥っていた。声が出せなかった。
恐怖、不快感、悲しさ。いろんな感情がごちゃ混ぜになっていた。
「みんなもやっていた」「なんでオレだけ」
そう言う男の子も、涙を流すまみさんを見ているうちに泣き始め、何度も謝ったという。
「もういいよ」
そこでやっと声を出すことができた。
先生の「ダメだなこりゃ」の一言に、罪悪感を覚えた
20年ほど前の経験。あの頃から胸には違和感がずっと残っていた。
今このエピソードを描こうと思ったのは、なぜだったのか。まみさんはハフポスト日本版の取材に対し、こう語った。
「Twitterで『子どもによる性加害』の話が話題になっていた時に、自分も経験があるなと思い描き始めました。漫画を描くことで何かを訴えるというよりは、ずっと引っかかっていたものを吐き出したいという気持ちででした」
まみさんを苦しめたのは、スカートをめくられお尻を触られたことだけではなかった。居合わせたクラスメイトや先生など周囲の反応にも、萎縮させられた。
「何を言っても私が泣いているだけだったので膠着状態が続き、休み時間も終わる時間に差し掛かり、先生も男の子たちもクラスメイトも段々『面倒なことになったぞ』という空気を出していたように感じました。その空気感にますます焦ってパニックになり、言葉が出なくなってしまいました」
中でも、今もはっきりと覚えているのは、先生の「ダメだなこりゃ」という一言。まみさんは、ひどくショックを受けたと振り返る。
「どういう意図で先生がそう呟いたのかは分かりませんが、私自身は迷惑をかけていることに罪悪感を覚えました。
ただ、私と同様に男の子の方も『大変なことになってしまった』と罪悪感や責任を感じたのではないかなと思っています」
2万以上の「いいね」。同じ体験をした人の声が多数寄せられる
この漫画を投稿したツイートには、2万以上の「いいね」が集まった。リプライ欄や引用リツイートには、子どもの頃に、同意なくプライベートゾーンを触られた体験を明かす声が多く寄せられた。
「これ、私もされたことある。私の場合は震えて動けなかった」
「子どもの頃のことでも、一生残る傷跡だよね」
「小さい頃の記憶を辿ると、こういうシーンは日常に沢山あった気がする」
予想外の反響、そして多くのコメントを見て、まみさんは驚いたという。
「(ツイートのリプ欄や引用RTを見て)過去に性被害を受けていたという方があまりにも多く言葉を失いました。年齢も性別も様々でしたが、やはり子どもの時に同級生や先輩からという方が多く、これは大きな問題だと改めて感じました。
また、赤の他人である私の気持ちに寄り添い、励まし憤慨してくださる方も多く、感謝すると共に時代は確実に変わっているのだということも感じました。 今回の私のツイートを通して問題提起している方が沢山いらっしゃるので、私も同じように声を上げていきたいと思いました」
まみさんは、漫画を投稿したあと大きな反響を見て、「大人になった自分達が価値観や意識の改革をしていかなければいけない」ともツイートした。
日本でも、性教育を通し、プライベートゾーンや性的同意、からだの自己決定権などに関して正しい知識を持つことの重要性が、少しずつではあるが、認識され始めている。
まみさん自身も、SNSを通してそういった変化を体感し、「おかしいと声を上げていいんだ」と気づかされたと明かす。また、自身に子どもが生まれたことも大きいという。
「私自身も、女性がーー性被害を受けるのは女性に限りませんがーー、軽い性被害を受けるのは仕方がないこと、幼い頃のセクハラまがいのことは、子どもの悪ふざけでしかないのだという価値観に支配されていたように思います。アニメなどにあるスカートめくりや覗きの描写も、当時は何の嫌悪感も感じずに見ていました。
しかし、そもそも性被害に重いも軽いもないのだということ、年齢は関係ないこと、犯罪であること。この意識を今は強く持っています。子どもを被害者にも加害者にもしたくないという思いから、こういった問題に向き合わなければいけないという意識を持ちました」
大人になった今、当時の自分に声をかけることができたなら、まみさんは、こう伝えたいと明かした。
「当時は自分が大袈裟に捉えているだけだと思っていました。笑って許せない自分が悪いのだと思っていました。でも今は当時の自分の感情は間違っていないし大袈裟でも何でもない普通の感覚なのだと伝えたいです」
性犯罪被害者の多くが自分を責めてしまう
性暴力の被害をめぐっては、被害者の多くが「自分さえ我慢すればいい」などと思ってしまい、被害を訴えることができないことが、様々な調査でわかっている。
内閣府が実施した「男女間における暴力に関する調査」では、無理やり性交などをされた人のうち、女性の約6割、男性の約7割がどこにも被害を相談しなかったと回答。
その理由として、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」「相談してもむだだと思ったから」などの回答が多数を占めた。