米国プリンストン大の上席研究員で、気象学者の真鍋淑郎さんが、2021年のノーベル物理学賞に選ばれた。
真鍋さんは、米国籍を取得している。プリンストン大学で行われた会見では、米国籍に変更した理由についても質問が上がった。
気候変動研究の先駆者 真鍋さんはどんな人物なのか
真鍋淑郎さんは1931年生まれで、愛媛県四国中央市出身。1958年に東京大学大学院の気象学博士課程を修了後、渡米した。
真鍋さんは、人間活動が地球に及ぼす影響を早くから予見し、1960年代から気候変動の先駆的な研究を続けてきた。デジタルが今よりも普及していなかった時代にコンピューターを駆使し、地球の大気全体の流れをシミュレートする気候数値モデルを開発した。
地球温暖化の予測モデルを切り開き、二酸化炭素濃度の上昇が地球の表面温度の上昇にどうつながるのかを示した。スウェーデン王立科学アカデミーは真鍋さんの功績について、「彼の研究は、現在の気候モデルの開発の基礎を築きました」と称えている。
「日本の人々は、いつもお互いのことを気にしている」
真鍋さんは、米国籍を取得している。
ノーベル賞受賞を受け、プリンストン大学で行われた記者会見では、なぜ国籍を変更したのかという質問が上がった。
「おもしろい質問ですね」と答えた真鍋さんは、国籍を変更した理由について、「日本の人々は、いつもお互いのことを気にしている。調和を重んじる関係性を築くから」と述べ、以下のように語った。
「日本の人々は、非常に調和を重んじる関係性を築きます。お互いが良い関係を維持するためにこれが重要です。他人を気にして、他人を邪魔するようなことは一切やりません」
「だから、日本人に質問をした時、『はい』または『いいえ』という答えが返ってきますよね。しかし、日本人が『はい』と言うとき、必ずしも『はい』を意味するわけではないのです。実は『いいえ』を意味している場合がある。なぜなら、他の人を傷つけたくないからです。とにかく、他人の気に障るようなことをしたくないのです」
その上で、真鍋さんは、「アメリカではやりたいことをできる」と語る。
「アメリカでは、他人の気持ちを気にする必要がありません。私も他人の気持ちを傷つけたくはありませんが、私は他の人のことを気にすることが得意ではない。アメリカでの暮らしは素晴らしいと思っています。おそらく、私のような研究者にとっては。好きな研究を何でもできるからです」
真鍋さんによると、研究のために使いたいコンピューターはすべて提供されたという。米国の充実した研究環境や、資金の潤沢さを伺わせた。
最後には、「私はまわりと協調して生きることができない。それが日本に帰りたくない理由の一つです」と語り、会場の笑いを誘った。