鳥貴族の代わりに『セックス・エデュケーション』を薦めるなどとやりたい放題の記事を覚えている方も、初見の方も、いらっしゃい! 待ちに待ったシーズン3が公開されました!
そして光の速さでシーズン4の制作が決まったぞ、宴じゃ〜!
そんなわけで今回も本編のストーリーに触れながら好き放題語るので、事前情報なしに観たいって人はぜひ本編を楽しんでから来てくれよな!!
新カップル「オーティス×ルビー」が大人気
今シーズンの見どころはなんといってもこのビッグカップル。
シーズン1.2から引き続き、どうやらオーティスとメイヴはおきまりのすれ違い。今シーズンもその2人が想いを通わせるのを待つわけですが…新シーズンの幕開けを華々しく飾るのはオーティス×ルビーのとんでもないお似合いカップル! 恋の障壁のように描くにはもったいないとの感想がたくさん。
スクールカースト上位の人気者ギャルであるルビーと、夏に体だけのカジュアルな関係を始めたオーティス。オーティスと関係があることを恥じて隠したいルビーに、オーティスも負けじと対抗。その化学反応ったらもう…ときめきが止まらない。
というかセックスを楽しむようになったオーティスの見た目の変化、ちょっとリアルすぎてお姉さん恥ずかしいのでやめてもらっていいですか(大歓喜)。
ルビーと体だけの関係!? オーティスやるじゃん! と知らん人まで声をかけてくる騒ぎ。この感覚はわからなくもないのですが、クラスの人気者の女子と関係があることで周りの男子からの見る目が変わってリスペクトされるって、コメディタッチに描かれているけどものすごくグロテスクな現実ですよね。
ここでルビーをトロフィーワイフ(※)のように扱わないオーティス、推せる…!!
※男性が自身のステータスシンボルにするために結婚した女性のこと。
ドラマの時代と国、いつどこ? 問題
さて、作品を読み解く時に欠かせない時代や場所設定がちょっと不思議なのが、このドラマ。
登場する人物は80年代や90年代前半のファッションに身を包み、インテリアや車、作中の音楽まで当時のもの。しかしiPhoneを使いこなし、シーズン1でも登場人物が2000年代のミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のファンであることが示されたり、今シーズンも「EXO」と書かれたレコードが映り込んでいたりと、現代であることが示されています。
国についてもイギリスの郊外が舞台のように見えますが、英語のアクセントは様々で、学校内の体育会系グループのファッションもアメリカの服装に近いものだそう。
また、現在のイギリスは制服の学校が多いことから、これは一体どういうことなのかと疑問を持つ人が国内外問わず少なくないようでした。
これに関して色々調べたところ、脚本家のローリー・ナン氏のインタビュー記事を発見しました!! 英語ですが、興味がある人は読んでみてください。
イギリス出身であるナン氏を含めた製作チームは、80年代に活躍したアメリカの映画監督ジョン・ヒューズ氏のティーンエイジ作品をオマージュしつつ、現代的なテーマを扱いたかったとのこと。そこにイギリスらしさを合わせることで独自のものになると考えたそうです。
ジョン・ヒューズといえば『ブレックファスト・クラブ』などが有名。80年代や90年代でさえまだまだフェミニズムやインターセクショナリティについて語られる作品は多くなかったといいます。
今まで散々使われてきたテンプレの「モテない主人公」を論理的でなく共感的なキャラクターにし、「ゲイの親友」はストレート男性の親友として登場させ、「石頭の校長先生」は若くて自称フェミニストの女性。
製作陣がやりたかった「典型的な型を使って、そこに新しい視点を追加する演出」ってニクいほど効くのよね。苦手な食べ物小さく刻んで好物に入れるのと一緒じゃん! 脱帽です。
すべての外陰部は美しい.com
シーズン2で性被害に遭ったことで自身の体やセックスに対して抵抗感を抱くようになったエイミーは、ジーンのセラピーで「すべての外陰部は美しい.com」というサイトを知ります。さまざまな形の外陰部を模したカップケーキを作り、学んだことを周りに広めることで、自分の体への肯定感を取り戻していこうとするエイミー。あなたはどうして人生最大の危機でさえ、周りの人まで救おうとできるの…!
どんな経験をしても、ポルノに同じような外陰部が並んでいても、奪われた尊厳は取り戻そうとしていいんだと勇気づけてくれます。クイーン・オブ・ボディポジティブ。
そんな作中のサイトが実際にあり、さまざまな外陰部のイラストと共に持ち主(?)のコメントを読むことができます。日本語訳はないみたいだけど、日本からのアクセスが増えたりリクエストを送ったりしたら、翻訳してもらえたりしないかな…?
ノンバイナリーの新キャラが2人も!
今シーズンで新しく、ノンバイナリー(※)のキャラクターが2人参加しています。2人の代名詞は「彼女=She」でも「彼=He」でもなく、単数形の「They」。日本語字幕では「この人」と訳されています。
2人とも、男女で分けられる学校改革の中で排除されそうになりますが、それぞれの困難への立ち向かい方を描き分け、「マイノリティだから権利のために絶対戦わなきゃいけないってことはない、戦える時に戦えばいい」というメッセージが伝えられます。
また、シーズン2では女性の連帯が描かれましたが、シーズン3ではノンバイナリーの連帯に言及したと当事者たちから評価の声も上がっていました。
転校生として新登場したキャルと元水泳部エースのジャクソンはしだいに打ち解け、友達以上の関係に発展しそうになりますが、ノンバイナリーのキャルは女性として見られているのではないかと疑念が晴れません。
「付き合うとしたら、君もマイノリティになる」とキャル。自認する性とは異なる性別としての好意を受け取ったら、透明な檻に入れられたまま愛されるようなもの。異性愛者に恋愛感情を抱かれたノンバイナリーの葛藤を抱いた学園ドラマ、今まであったでしょうか。
それにしても2人の友達以上恋人未満の相性があまりにも最高で、この時間がずっと続けばいいのに……と思ってしまったのは私だけですか?
※自身の性自認、性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめようとしないセクシュアリティのこと。
新校長の存在、必要だった?
今シーズン一番の存在感を放つ、ムーアデール高校の新校長を演じたのはHBOドラマ『GIRLS』で主人公の親友を演じたジェマイマ・カーク。シーズン3に出演が決定した時から心を踊らせていたGIRLSファンは少なくないはず。
登場の仕方がかっこよすぎたため、生徒たちは最高の校長先生が赴任してきた! と大喜び。しかし、白人と黒人の生徒を見て、白人の生徒が生徒会長だと疑わないシーンから暗雲が立ちこめます。
廊下の真ん中に一本の線が引かれたことを皮切りに、どこかの国を彷彿とさせる校則のオンパレード。性教育の授業は「成長と発達」に改名され、男女別のクラスで禁欲を説くように。当然、実質上存在を否定されたノンバイナリーのキャルは授業をサボるしかありません。
「黒人女性が生徒会長だと先進的で良い印象を与えられる」「バッヂがなければ表明できないような信念なの?」「(鼻ピアスは)本当は賢くないんだって思っちゃう」など、生徒に対する“励ましてる風で、やたら説得力のある差別発言”のニュアンスがリアルすぎて怖いです!!
極め付けのディティールで鳥肌がたったこと、この校長が「私はフェミニストだから」と自称していたところ。あるある重箱すぎて、社会問題運動会開けそう。
そうでしょうよ、若い女性のリーダーとしての自負はあるんでしょうけど、出世のためにシステムに逆らわない選択をしてきたのも本当なんだろうなぁ。そこのジレンマに悩んでる女性たちのモヤモヤを魂にしてできたキャラクターですか……?
そうなの!!! 若い女性がトップだったらなんでも良いわけないじゃん!! されたら困ることは、困るの!!! 選択肢が少なすぎるのーーー!!!! 若いどころか女性のトップさえ全然いない時はどうしたらいいんだっけ?? あれれーーーーッ!!?
失礼、ご乱心の声が入りました。シーズン3はこの校長が好き放題やるため肝心の群像劇が後回しになった印象は若干否めず、この設定っている!? という声もちらほらあったんですけど、日本の視聴者にはタイムリーな校則が出てくるので個人的にはあってよかったかなと。
シーズン4に向けて、リクエストしたいこと
シーズン4があるのかわからないうちにこの記事を書いていた筆者、次作決定のお知らせで舞い踊りながら大声でリクエストを叫びます。
次回は! アジア系キャストを増やしてほしいなぁ!
アフリカ系や中東系のキャストを増やす意識はとても伝わってきたので、アジア系の登場人物が活躍するシーンが少なすぎるのが逆に不思議で残念。え、イギリスに私とか足りてない? オーディション受けに行こか?
もうひとつ、日本語吹き替えで女言葉使わなさそうなキャラに「〜だわ」って言わせるのはもったいないな…と思った。頼むよNetflix Japan?(ぎこちない笑顔)
あと、猫への当たりが強くてショック受けてた視聴者もいたので少し言及すると、あれは喪失感や不安感をかき消すための性欲があるという話を入れたかったんじゃないかな? と予想。悲しみのためにむやみに人を殺さないようにしているこのドラマならではの工夫だったのかなと…。
オーティス役のエイサ・バターフィールドが「エ…エン…エンドゲーム?」と次作へ匂わせしていたのでやっぱりね! 思った通りだよ! 大好きです。
こうして出演者のインスタグラムを見ると、現実の俳優が演じているんだった…と我に返って彼らの実力にめまいが……。
皆とんでもないけど特にエイミーとアダム、そして今回のルビーの繊細な感情表現は何事なの? みんな売れて〜!
親世代の恋愛や親友たちのゆくえ、エリックのルーツを辿る旅、修学旅行事件などなど触れたい話は尽きないけれど、今回はこの辺で。2周目を迷ってるみなさん、まだ見てないのにこの記事読んじゃったどうしようというみなさん、沼の入り口はここですよ。(ウインク)
(文:はましゃか/イラスト:HAMAMOTO NATSUMI/編集:毛谷村真木)