ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性暴力を受けたとして損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審第1回口頭弁論が9月21日、東京高裁であり、結審した。判決は2022年1月25日に言い渡される。
これまで、6回にわたり非公開の準備書面手続きなどが行われてきた。21日の口頭弁論では、伊藤さん、山口さんの2人が意見陳述に立った。
伊藤さんは、「準備書面などの攻撃的な資料が届くたび、また新たな加害が行われているように感じた」と述べ、「苦痛の日々を過ごしてきました」と語った。
一方、山口さんは、伊藤さんの訴えには「明らかな嘘や矛盾があります」などと主張。伊藤さんに向けて、「真実に正面から向き合ってください」と述べた。
一審で伊藤詩織さん勝訴 どんな判決だったのか
この裁判で伊藤さんは、2015年4月に就職相談のため食事をした山口さんから性暴力を受け、肉体的・精神的苦痛を被ったとして、慰謝料1100万円の損害賠償を求めている。
一方、山口さんは、性行為は合意の下で行われたと主張。会見や著書の公表などを通して伊藤さんから名誉を毀損されたなどとして、慰謝料1億3000万円や謝罪広告の掲載を求めて反訴した。
2019年12月18日の一審・東京地裁判決(鈴木昭洋裁判長)で、伊藤さんは勝訴した。
東京地裁は伊藤さんの主張を認め、性行為に合意がなかったと認定。「酩酊状態にあって意識のない原告(編集部注:伊藤さん)に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実」と「意識を回復して性行為を拒絶したあとも原告の体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実」が認められるとして、 山口さんに慰謝料など約330万円の支払いを命じた。また、山口さん側の請求は棄却した。
山口さんは東京地裁の判決を不服として、2020年1月6日、東京高裁に控訴した。
刑事では不起訴に
伊藤さんは2015年4月、警視庁に準強姦容疑(当時)で被害届を提出。「週刊新潮」報道などによると一旦は逮捕状が出たものの、逮捕直前で取りやめとなり、山口さんは翌2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となった。
その後、2017年5月29日、伊藤さんは検察審査会に不服を申し立てるタイミングで記者会見。実名・顔出しで、自身の性暴力被害を訴えた。
同年9月、検察審査会は「不起訴を覆すだけの理由がない」として、「不起訴相当」との判断を下した。
一方、山口さんは自身のnoteで、2019年6月に伊藤さんを名誉毀損などで刑事告訴していたことを公表。告訴を受けた警察が、刑事訴訟法上の手続きとして伊藤さんの書類を検察に送付したが、伊藤さん側の代理人によるとその後不起訴となった。