自民党総裁選が9月17日、告示された。届出順に、河野太郎・規制改革担当大臣(58)、岸田文雄・前政調会長(64)、高市早苗・前総務大臣(60)、野田聖子・幹事長代行(61)の4人が立候補した。総裁選は、9月29日に投開票される。
この日、立候補した4人による共同記者会見が開かれた。4氏が語った「総裁選の争点」と、意見が割れた「皇位継承」をめぐる議論についてまとめた。
■総裁選の争点は?
記者団から「総裁選の争点」を問われ、河野氏は「『国民からの支持』が最大の争点になるのではないか」と語った。その上で、賃上げや年金改革などを挙げ、「国民に生活が豊かになりつつあると実感していただけるというのが一番大事なことだ」と強調した。
岸田氏は「コロナ対策も大きな論点」としつつ、「自民党の信頼回復、自民党の改革だ」と主張。党改革の具体策を挙げ、「自民党をより近代的な政党に変えていかなければいけない」と訴えた。
高市氏は「感染症だけではない、災害などもふくめて今後、私たちが直面する様々なリスクの最小化。これに対する取り組みが争点になる」との考えを示した。
野田氏は「有事であるコロナウイルスとの対峙」を挙げた上で、「これまで子どもに対しての取り組みがなかった」と指摘。人口減少を踏まえ、子どもへの取り組みを重視する考えを示した。
■皇位継承をめぐる4氏の考えは?
会見では、皇位継承をめぐる考えも問われた。母方だけに天皇の血をひく「女系天皇」を容認するかどうかをめぐり、見解が分かれた。
河野氏は「126代続いている日本の伝統を次の世代に受け継ぐのは非常に重要だ」としつつ、「世の中に広く共感をいただくことが大事だ」と述べたが、女系天皇についての賛否は明言しなかった。
岸田氏は、女系天皇に「反対」の考えを示した。「皇位継承は例外なく男系天皇が継承してきた歴史と伝統にかんがみ、日本人の皇室に対する見方を考えるとき、女系天皇には私は反対だ」と語った。
高市氏も「私は男系維持、そのために工夫をしていく」と語り、女系天皇を容認しない考えを示した。
一方、野田氏は「総裁選では皇位について議論すべきではない」と述べた上で、「戦後、男系男子を続けていくには難しい状況に今なっているのも事実だ」とし、「様々な選択肢を国民に届けていくことが大事だとするなら、その一つの選択肢として女系天皇は含まれる」と語った。
さらに、「私はジェンダーを推進している、女性活躍を推進している政治家の一人だ」とした上で、「それと女性、女系天皇とリンクさせる人がいるが、それはまったく別々の領域だと承知いただきたい」とも述べた。
また、森友学園をめぐる問題についても問われ、河野、岸田、高市の3氏は再調査に否定的な考えを示したが、野田氏のみ「調査をする必要がある」と語った。
【総裁選の争点をめぐる4氏の発言】
河野太郎氏
「『国民からの支持』が最大の争点になるのではないか。過去最高の税収をあげながらなかなか国民に豊かになったと実感を持っていただけていないことを考えると賃上げ、年金改革、あるいは未来への投資を活用して、国民に生活が豊かになりつつあるということを実感していただけるというのが一番大事なことではないか」
岸田文雄氏
「最大のテーマは、コロナ対策も大きな論点だが、なんといっても自民党の信頼回復、すなわち自民党の改革であると思っている。すでに出馬表明した際に、中堅若手の登用、あるいは権力の集中・惰性を防ぐということから役員の任期の明確化等を打ち出した。さらには昨日、女性局・青年局の声をしっかり反映させるために、自民党版ガバナンスコード検討委員会という新たな組織を立ち上げ、外部の目もしっかり入れながら、自民党をより近代的な政党に変えていかなければいけないと訴えた。こうした具体的な策を打ち出している。しっかりやりきりたい」
高市早苗氏
「総裁選のテーマは、国民の大きな関心事項は国民の命をいかに守り抜くかであると思う。感染症だけではない。災害なども含めて今後、私たちが直面する様々なリスクの最小化、これに対する取り組みが争点になるといいな、と思っている」
野田聖子氏
「有事であるコロナウイルスとの対峙。従来株からデルタ株に変わり、感染力は強いけれど重毒化していない。いま目の前にある問題は、従来株でかからなかった子どもたちがかかりやすくなっている。これに対してこれまで子どもに対しての取り組みはなかった。子どもに対してきちんとした教育を整えていく、社会活動ができる、そして子どもたちに心の傷を残さないために私たちが何ができるかということを一つ取り組んでいきたい」
「さらに私が言いたいのは、人口減少を本当に真剣に考えましょうと。もう子どもが生まれてこなくなっている。この子たちが私たち日本の礎なんです。これに抜本的に取り組むために来年の通常国会ではこども庁の設置法案とか、それに関わる、こどもまんなか基本法を提出することで新しい日本を作っていきたい」
【皇位継承をめぐる4氏の発言】
河野太郎氏
「126代続いている日本の伝統を次の世代に受け継ぐのは非常に重要だ。現在の有識者会議が非常に堅実な議論をしている。その有識者会議が今後、最終的にまとめるであろうものを尊重していきたい。ただ、世の中に広く共感をいただくことが大事だ。我々が守ろうとしているものはなんなのか、世の中に丁寧に説明していく必要がある。いろんな世論調査をみると、男系、女系、女性とはなにか、しっかり伝わっていないアンケートになっている。この126代、何を受け継いできたのか、広く国民に理解をいただく努力はやっていかないといけない」
岸田文雄氏
「皇位継承は例外なく男系天皇が継承してきた歴史と伝統にかんがみ、さらには日本人の皇室に対する見方を考えるとき、女系天皇、私は反対だ。なお、安定的な皇位継承策については、旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含め、女系天皇以外の方法を検討すべきと考える」
高市早苗氏
「男系維持について、やはり126代続いた男系の血統、私どもは皇統と呼んでいるが、これはまさに天皇陛下の権威と正当性の源でもあり、世界の王室には比類をみないものだ。多くの国民の誇りでもあり、また敬愛の情、源でもある。私は男系維持、そのために工夫をしていく。先ほど岸田候補が言ったとおり、旧皇族の皇籍復帰を希望している」
野田聖子氏
「そもそも総裁選では、皇位について議論すべきではない。憲法上、やはり国民が主権ということで、自民党がこういう議論をするべきではない、個人の意見をいうべきではないという立場に立っている。しかし、私の立場からいうと、誤解されていることの一つに、私はジェンダーを推進している、女性の活躍を推進している政治家の一人だ。それと女性、女系天皇とリンクさせる人がいるが、それはまったく別々の領域だと承知いただきたい。そのなかで、男系男子を続けていくこと、これが天皇の唯一無二、ユニークネスを保持していくことであることを踏まえ、ただ戦後様々、男系男子を続けていくには、難しい状況に今なっているのも事実だ。これは国民に広く意見を求めていかなければならないし、予め議論をとざしてはいけない。様々な選択肢を国民に届けていくことが大事だとするなら、その一つの選択肢として女系天皇は含まれると理解している」