音楽フェス、海外ではどう開催? ワクチン接種必須の流れ、出演辞退も相次ぐ

密状態で開催され、大きな問題になっている日本のフェス「NAMIMONOGATARI2021(波物語)」。海外では、ワクチン接種や検査陰性を必須の上で開催するケースが増えている。
アメリカ・シカゴで行われたロラパルーザ(2021年8月1日撮影)
アメリカ・シカゴで行われたロラパルーザ(2021年8月1日撮影)
Michael Hickey via Getty Images

観客が密集した状態になり、さらに酒類の提供も行っていたとして批判を浴びている愛知県のヒップホップ野外フェス「NAMIMONOGATARI2021(波物語)」。

8月には、地元町民から不安の声も聞かれるなかで、日本の野外フェスの草分け的存在である「フジロック」が新潟県で開催された。新型コロナの感染拡大により病床が逼迫していることなどから、SNSでは厳しい批判の声もあがった。 

2020年は多くの夏フェスが開催を中止・延期したが、2021年は対応は主催者ごとに様々。

夏フェスや大規模なライブは、海外ではどんな条件のもとで開催されているのか。

ワクチン接種必須の流れ。米フェスでは40万人のうち203人が陽性

アメリカの大手プロモーター(興行主)の間では、来場者のワクチン接種を必須にする流れが生まれている。アメリカでの必要回数のワクチン接種完了率は53%(8月31日時点、Our World in Dateより)。

世界最大級の夏フェス「コーチェラ」を主催し、多くのライブ会場を所有するAEG Presentsは、デルタ株の対応として、8月12日にライブ開催に関する新たな方針を発表。同社が運営するすべてのライブ会場、フェスに参加する場合は、ワクチンの接種証明の提示を求めるという。10月から施行し、それまでは72時間以内に受けた検査の陰性証明の提示でも入場可能とした。

Varietyなどによると、大手ライブネーションも、同社で主催するフェスやライブ会場では、出演者、観客、スタッフに対し、ワクチン接種済みか、検査での陰性を示すことを義務付けるという。

ロラパルーザの観客エリアの様子(2021年7月31日撮影)
ロラパルーザの観客エリアの様子(2021年7月31日撮影)
Gary Miller via Getty Images

ライブネーションはこのオペレーションを用いて、7月29日から8月1日までロックフェス「ロラパルーザ」をシカゴで開催。4日間で約38万5000人が来場した。

その後13日、シカゴ公衆衛生局(CDPH)長官のアリソン・アーワディ氏は、ロラパルーザの参加者で新型コロナ陽性が確認されたのは、203人と発表

203人とは参加者の約0.05%であり、アーワディ氏はロラパルーザへの参加者が「スーパースプレッダーとなった証拠はない」との見解を示した。参加者のうち約90%がワクチンを接種していたという。

大手プロモーターの対応を批判するアーティストも 

ニール・ヤングはこれまでもよく出演していたフェスの出演辞退を発表した
ニール・ヤングはこれまでもよく出演していたフェスの出演辞退を発表した
Gary Miller via Getty Images

コロナ禍でのライブ開催の方法を模索するアメリカの大手プロモーターだが、こうしたやり方を批判するアーティストもいる。

現在75歳のロックミュージシャン、ニール・ヤングは8月23日に、感染拡大を防ぐためには、ライブビジネスの「金儲け」を優先すべきではないといった自身の考えをつづった文書を公式サイトで発表した

ニール・ヤングは9月に開催予定のフェスの出演を辞退。その理由について、「ライブで感染し、無症状で家に帰って自分の子どもや他の子どもを抱きしめる人たちによって、無防備な子どもたちが新型コロナに感染することを恐れている」と説明した。

AEG Presents、ライブネーションを名指しし、「彼らはエンターテイメントビジネスのほとんどを支配していて、何千もの人が集まり、感染を拡大するショーを中止させる権限を持っている。ショーを続けるのはお金のためだ」と厳しく批判。「大手プロモーターはスーパースプレッダーに対して責任がある」と糾弾している。

他にも、フェスへの出演を辞退したり、自身の大型ツアーをキャンセル・延期したりするアーティストは相次いでいる。また、大規模なライブを行うアーティストは、AEG Presentsやライブネーションのオペレーションを踏襲しワクチン接種か、検査陰性の証明を求めているケースが多い。

「政府の実験イベント」としてフェス開催。参加者1000人以上が後に陽性

イギリスのラティテュード・フェスティバルの様子(2021年7月24日撮影)
イギリスのラティテュード・フェスティバルの様子(2021年7月24日撮影)
Dave J Hogan via Getty Images

ワクチン接種完了率64.4%(8月31日時点、Our World in Dateより)のイギリスでは、「政府の新型コロナ対策の実験イベント」として7月21日から24日まで「ラティテュード・フェスティバル」が開催され、4日間で15万人以上が参加。BBCガーディアンによると、ワクチン接種済みか、検査で陰性である人だけが参加できた。開催期間中に432人が「他人にウイルスをうつし得る状態」だったとみられており、開催後には619人が感染。計1051人が同フェスに関連して新型コロナウイルスに感染したことになるという。

また、8月11日〜15日にかけて開催された音楽とサーフィンのイベント「ボードマスターズ」でも、関連と考えられる新型コロナウイルス陽性がおよそ4700件確認されている

レディング・フェスティバルの観客エリアの様子(2021年8月29日撮影)
レディング・フェスティバルの観客エリアの様子(2021年8月29日撮影)
Andrew Benge via Getty Images

直近では、8月27日〜29日に、動員10万人規模の「レディング・フェスティバル」が開催。入場ルールとして、11歳以上の参加者に対し、▽14日前までに、2回のワクチン接種完了、▽NHS(国民保健サービス)の「ラテラルフロー」検査の陰性、▽180日以内のPCR検査陽性による自然免疫のいずれかを証明する書類を提出するよう求めた。

さらに会場では、NHSと協力しワクチン接種ができるエリアも設けられた

日本ではフジロックが任意で検査呼びかけ

アメリカやイギリスでは、大規模なフェスは、来場者に対しワクチン接種や検査陰性を参加の条件とした上で開催する流れができつつある。

朝日新聞デジタルNHKによると、フジロックは、希望する来場者に対し、事前に抗原検査キットを送付し、事前の検査を呼びかけるなどの措置を講じた。また、出演するアーティストを含めた全関係者には事前のPCR検査を実施したという。フジロックでは、検査陽性による出演キャンセルや、辞退を表明するアーティストも相次いだ。 

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