【サステナビリティ戦略】モノを売るのではなく、顧客の人生を変えることを考えよう

これは、「より大きく」から「より良く」への移行である。実世界であれオンラインであれ、どのように商売をするのかを見直すべき時が来ている。
Peter Bond
Peter Bond
サステナブル・ブランド

人生で最も大切なのはモノではない。

もし、この言葉をしっかりと受け止め、営業やマーケティング戦略に取り入れたら、不安定な経営を変えることができ、サステナビリティ戦略においても大きな成果が得られるかもしれない。

実店舗型の店は衰退し続けているが、これはオンラインストアの増加だけが原因ではない。ボタンを一つクリックするだけで買えるジーンズを、わざわざ店に行って買うのはなぜだろうか。

多くの人は、あらゆるところで売り出されているモノを欲していない。商品、商品、商品・・・。見渡せば商品だらけだ。同じことが、レストランやジムなど、都市にあふれる多くの商業施設にいえる。さらには、都市自体が、人々の住む場所というより、商業のための場所となっている。買うことにはあまり意味がなく、存在することが全てである。

例えば、カナダのスポーツ店であるRYUは、どんなものであれ、人々が人生のゴールを達成する手伝いをすることをミッションとしている。店舗が、地域コミュニティに運動するスペースを提供している。これは、「より大きく」から「より良く」への移行である。実世界であれオンラインであれ、どのように商売をするのかを見直すべき時が来ている。

2つのヒント

1.「より良い製品」 か、「より良い自分」か

ナイキやイケアなどの、大手小売業者は「買うこと(buying)」から「新しい状態になること(being)」へシフトするという実験を行っている。米ニューヨークのソーホーにあるナイキの店舗は、ワークショップやデジタル・エクスペリエンス、ギャラリー、共同制作スペースなどがメインとなっていて、従来の販売するストア部分は少ない。そして対応するのは、セールスマンではなくブランド・アンバサダーだ。迷宮のような巨大な店舗で有名なイケアはコペンハーゲンに小さなデザインスタジオをオープンした。デザイナーが自分のドリーム・ホームを実現してくれる場所となっている。新しい家具は家に直接届けられ、環境への負荷にも配慮した仕組みだ。

ディストリクト・ビジョン(District Vision)のようなより小さい、挑戦者のブランドはこうしたシフトを実践している。ランニング用のサングラスを販売しているが、実際に人々が購入しているのは、イベントやレクチャーが提供される「マインドフル・ランニング」と呼ばれるコミュニティに参加する権利だ。

自分自身に問いかけてみよう。何かを売るのではなく、人々がより賢明に、健康に、そして感動するために何ができるだろうか。

2.リモコンを委ねる

既成のシステムをわざわざ避けるのは、もはや一部の人だけではない。意識の高い消費者、便利さを求める善良な人たち、もしくは長いこと「ありえない」と主張していた活動家と呼ばれる人たちだ。インターネットに人々が期待する選択肢(それが錯覚だったとしても)や、ボタンを一度クリックするだけで検索できるということが、人々に力を与えた。もし企業ブランドとして消費者の言葉でもって商売ができなければ、つまり商品について話すよりも選択肢について多く話さないなら、扉をすみやかに閉ざしてしまうことになるだろう。

あなたの企業やブランドはどうすれば、人々の発言権を高めることができるだろうか。2018年、ネスレは大阪にオリジナルのキットカットを作れる店をオープンした。チャーリーとチョコレート工場のように、6つのチョコーレートベースが用意されており、9種類以上のトッピングが選べる。液体窒素によって自分だけのチョコレートが完成するのを見ることができる。

ボルボの新たな電気自動車の姉妹会社であるポールスター(Polestar)はコペンハーゲンにショールームをオープンした。小さなストアの中に、車が一台だけ置いてあり、大きなディスプレイ上で顧客が自由に車をカスタマイズできる。

企業ブランドはこうした動きをさらに推し進め、人々とさらなるコラボレーションを行っていくことも可能だ。そうした新たなアプローチをとっている会社に、スペインの通信会社「Suop」がある。Suopでは一般の人たちがカスタマーサービス、新製品の開発や提案など、企業のいくつかの部門に積極的に参加している。あなたの企業は、人々の夢や希望のためにさらにオープンになれるだろうか。そして、一般の人たちに製品の開発から価格設定にいたるまでの過程に関わってもらうことができるだろうか。

「人がいるところ」ではなく「その人たちが誰であるか」に目を向ける

マスメディアからマスプロダクション(大量生産)まで、全てが問われている。広告においては、人がいるところにリーチするのではなく、その人たちが誰であるかにリーチする必要がある。

物質的な豊かさが十分な水準に達している社会がある現在、人々の内面の豊さに注目していくべきだ。それは幸福感、コミュニティとの繋がり、ストレスの少なさ、充実した市民生活などだ。物質主義はもはや勝てる戦略ではない。

新たな靴を買う喜びは、一瞬のドーパミンの上昇に過ぎない。しかし、自分自身と調和のとれた生活は、生涯にわたる価値の提供だ。人間と地球の正しいバランスをとる時代がきた。新しいリーダーシップが必要だ。

あなたの企業は人がどのようになる助けができるだろうか。

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