「コロナ禍」は、新型コロナウイルスの感染が広がっている私たちの生活環境を表す言葉として、すっかり定着しました。
新型コロナが招いた危機的、災厄的な状況をさす言葉で、「コロナか」と読みます。
実は、コロナが広がる状況を表すもう一つの言葉があります。
「コロナ下」
です。
読み方は同じく「コロナか」。
信濃毎日新聞によると、「コロナが広がる状況下」での社会の動きなどを示す場合に使われているといいます。
具体的な表現として、「コロナ下、初の共通テスト」「コロナ下でネット活用」などが見受けられると説明しています。
「コロナ下」「コロナ禍」違いや使い分けは?
「コロナ下」と「コロナ禍」。どんな意味の違いがあり、どう使い分けているのでしょうか。
コロナ下が「コロナの状況下」というのに対して、コロナ禍は、災いというマイナスの意味が含まれるケースがあります。
信濃毎日新聞は、コロナ禍について「コロナ下も含むより幅広い使われ方として定着しつつある」と説明しています。
言葉の使い分けについては、次のような見解を出しています。
「新型コロナの感染者は自ら進んで感染したわけではありません。それを否定的に捉えることがないよう、記事の内容に応じて使い分けるようにしています」
NHKの放送用語委員会も、2つの「コロナか」の用途や使い分けについて見解を出しています。
NHKでは、「コロナ下」という表現を使うこともありますが、主に「コロナ禍」を使っているといいます。
その理由について「使い分けが難しい上、発音・アクセントとも同じであるため、音声だけではどちらであるかを判別することができない。そのため、より一般的な『コロナ禍』を使って表現するケー スが圧倒的に多い」と説明しています。
朝日新聞の記事データベースで検索し、見出しや本文にそれぞれの単語が含まれる記事の本数を比べてみました(9月28日午前10時半時点の調べ)。
「コロナ下」は1488件(初出2020年4月26日)
「コロナ禍」は2万9074件(初出2020年3月12日)
2つの単語はほぼ同時期に使われ始めましたが、「コロナ禍」が圧倒的に多く使われています。
広まらなかった「コロナ禍下」「コロナ禍中」
NHK放送用語委員会によると、一部の新聞社や通信社では、「コロナ禍下(かか)」「コロナ禍中(かちゅう)」「コロナ渦中(かちゅう)」という表現も使われていたといいます。
「『新型コロナウイルスの感染が拡大する状況下』『新型コロナウイルスの感染が拡大する中』という意味を明確にするため」と説明しています。
朝日新聞の記事データベースで調べると、各単語を含む記事はそれぞれ、「コロナ禍下」が7件、「コロナ禍中」が22件、「コロナ渦中」が3件ありました。ごく一部の記事での使用に留まり、広く普及はしていないようです。