東京オリンピックの陸上女子ベラルーシ代表のクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が、コーチの不手際を批判したのを理由に帰国命令を受け、国際オリンピック委員会(IOC)や日本政府に助けを求めている。
帰国を拒否したツィマノウスカヤ選手に対して、ポーランド政府が支援や受け入れを表明し、人道的な配慮によるビザを発給したと説明している。
オリンピックの裏で、ツィマノウスカヤ選手に何が起きているのか。経緯をまとめた。
「IOCの介入を求めます」
ツィマノウスカヤ選手は7月30日、女子100メートルに出場したが、予選突破はならなかった。
オリンピック公式サイトのプロフィールページによると、女子200メートル、女子1600メートルリレーにも出場予定だった。
状況が変わったのは8月1日。
ベラルーシのメディア「NEXTA」がツィマノウスカヤ選手の動画をTwitterに投稿。彼女が「IOCに助けを求めます。プレッシャーをかけられ、同意なしに私を日本から出そうとしている。IOCの介入を求めます」と訴えていると、ツイートで説明した。
何が起きたのか。
朝日新聞によると、ことの発端は、5日の女子1600メートルリレー予選のメンバーに、ツィマノウスカヤ選手が不本意に入れられたことだという。ツィマノウスカヤ選手がコーチ陣の不手際を批判する映像をSNSに投稿すると、削除を強く求められたという。
ツィマノウスカヤ選手はロイター通信の取材に、8月1日に自身の部屋を訪れたコーチングスタッフから、荷物をまとめるよう言われたと説明。ベラルーシのオリンピック代表団によって羽田空港に連れていかれたが、帰国を拒否した。ロイター通信の取材に「ベラルーシには戻らない」と答えている。
帰国を拒否する理由について「投獄される可能性がある」と説明しているという。
介入を求められたIOCは2日、Twitterで「IOCとTokoy2020はツィマノウスカヤ選手と直接話をした。彼女は羽田空港にいて、現在Tokyo2020のスタッフも連れ立っている」と状況を説明。
「彼女は私たちに、安全であると感じていると語っている」と付け加えた。
ポーランドのマルチン・プシダチ外務次官も2日、Twitterで「ポーランドは、オリンピックからの帰国をルカシェンコ政権に命令されたツィマノウスカヤ選手を助ける準備がある」と支援を表明。「彼女に人道的な配慮によるビザを与え、本人が望めばポーランドで自由にスポーツのキャリアを求めることができる」と宣言した。
同じ日、ツィマノウスカヤ選手が在日ポーランド大使館に入る様子が伝えられている。
プシダチ外務次官はその後、ツィマノウスカヤ選手が人道的な配慮によるビザを取得したとツイート。「ポーランドは、彼女がスポーツキャリアを継続するために必要な支援は何でもする」とつづった。
ポーランドへの亡命が受け入れられたとみられる。
7月には、大阪府泉佐野市で事前合宿をしていたウガンダの選手が、一時行方不明となる出来事も起きている。
選手は当初、日本残留や難民申請を希望していたという。説得を受けてウガンダに帰国後、ウガンダ当局に一時身柄を拘束された。