酒類の取引停止依頼も撤回 政府、猛反発受け方針を転換
政府は13日、新型コロナウイルス対応で酒類販売事業者に対し、休業要請などに応じない飲食店との取引を停止するよう求めた方針を撤回した。業界団体や自民党内から強い反発が出ていた。金融機関に事業者への働きかけを求めるとした政府方針の撤回に続き、酒類提供停止をめぐる菅政権の迷走が続いている。
今回の緊急事態宣言を決定した8日に内閣官房と国税庁が、酒の提供自粛に応じない飲食店との取引停止について、卸業者を含む酒販などの関係団体に文書で依頼。西村康稔経済再生相は13日午前の記者会見で要請への対応について明言を避けたが、業界団体などが自民党に撤回を求め抗議するなどしていた。内閣官房は13日夜、関係団体への依頼を撤回することを発表し、団体宛てに撤回文書を出した。自民党の議員連盟「街の酒屋さんを守る国会議員の会」(田中和徳会長)は13日、緊急総会を開き、政府に「取引停止」依頼を撤回することや酒類販売業者への支援拡充を求めていた。
一方で、西村康稔経済再生相はこの日の会見で、金融機関に事業者への働きかけを求めるとした政府方針を撤回したことについて、「私の発言で混乱を招き、飲食店の皆様に不安を与えた。趣旨を十分に伝えきれず反省をしている」と陳謝。「融資を制限したりするといった趣旨ではなかったが、様々なご指摘を重く受け止めて、不安を払拭(ふっしょく)するため、この金融機関への働きかけは行わないことにした」と説明した。
菅義偉首相は13日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談し、金融機関への政府方針撤回について、「ご心配をおかけしました」と陳謝した。会談後、山口氏が記者団に明らかにした。
また金融機関への働きかけをめぐっては、首相らが7日の関係閣僚会合で事務方から事前に説明を受けていたことも明らかになった。首相は9日、首相官邸で8日夜の西村氏の会見での発言について記者団から問われ、「承知していない」と述べていた。方針は撤回されているが、政府内で方針が共有されていたことで、批判がさらに強まる可能性もある。西村氏や加藤勝信官房長官が13日の会見で経緯を説明した。
(朝日新聞デジタル 2021年07月13日 23時00分)