女子サッカー日本代表・なでしこジャパンで活躍し、現在はワシントン・スピリットに所属しているサッカー選手の横山久美さんが6月19日、トランスジェンダーであることをカミングアウトした。
YouTube動画で「将来、サッカーを辞めて男になって生きていきたい」と明かし、カミングアウトをした思いについて、丁寧に語っている。
なでしこジャパンとしてサッカー界に貢献 横山選手がカミングアウト
横山さんは東京都多摩市出身のサッカー選手で、AC長野パルセイロ・レディースでプレーし、2015年になでしこジャパンに初招集された。2018年のAFC女子アジアカップでは決勝ゴールを決めなでしこジャパンの優勝に貢献し、2019年のFIFA女子ワールドカップのメンバーに選出された。
現在はアメリカの女子プロサッカーチームのワシントン・スピリットに所属し、アメリカを拠点にしている。
横山さんは、同じく日本代表選手として活躍した永里優季さんのYouTubeチャンネルに出演。「横山、カミングアウトします」と題した動画で、永里さんからインタビューを受けるかたちで、自身がトランスジェンダー男性であることを公表した。
「日本にいた時は隠していた」横山さんが語ったこと
横山さんによると、自身のジェンダーアイデンティティ(性自認)については、「日本にいた時は隠していた」という。
しかし、ドイツやアメリカでの生活を経て「オープンにしていいんだな」と感じたといい、日本での理解促進への思いも込めて、公表することを決意したという。
「最近は日本でもLGBTQっていう言葉が普及してきて色々取り上げられていますけど、自分みたいな立場の人たちが声を大にして言わないと、まだまだ発展していかないかなと思って」と、その心境を語っている。
日本にいた時はすごい隠していたんですよね。世間の目っていうのもあるし、一応立場上というのもありましたし。
でも、アメリカとドイツに行った時に、恋愛系の話になった時に、聞かれるのは日本だったら絶対に『彼氏いるの?』みたいな感じで聞かれるじゃないですか。でもそうじゃなくて、こっちだと『彼氏、彼女どっちいるの?』みたいな感じで聞かれる。それが普通っていうか。
すごいこっちの人たちって...心が広いっていうか。『自分は違うけど、あなたはどっち?』みたいな感じとか。
最近は日本でもLGBTQっていう言葉が普及してきて、色々取り上げられていますけど、一応自分みたいな立場の人たちが声を大にして言わないと、まだまだ発展していかないかなと思って。
--永里さんのYouTubeチャンネルにアップされた動画「横山、カミングアウトします」より
そして、横山さんは、「すべてを理解するのは絶対無理だと思うんですよね」と前置きした上で、カミングアウトへの思いをこう明かした。
「自分だけじゃなくて、今結構声を大にしている人たちとかみんなで力を合わせたら、もうちょい発展していくのかなと思って。自分が立役者とか、そういう感じにならなくていいんです。どっちかって言うと、そういう人たちも受け入れられる。そういう風になったらいいなって」
「大丈夫なんだ、言えるんだってなったらいい」
動画では、自身のジェンダーアイデンティティに気づいた経緯や、トランスジェンダー男性としてサッカーチームでプレーすること、パートナーへの思いなどについて、率直に語っている。
性的マイノリティーが暮らす上で直面する生きづらさについても話した横山さん。動画の最後では、自身がトランスジェンダーであることをオープンにすることで、同じ立場の人にポジティブな影響を与えたいとも話した。
ーー(永里さん)こうやってオープンにすることによって、自分自身へのチャレンジでもあり、まわりの人に影響を与えていきたいっていう思いもある?
ありますね。与えられる存在かどうかはわからないですけど、そういう存在になれたらいいなと思う。
今後、自分みたいな人が出てきた時に...サッカー界でもいろんなスポーツ界でも。この人が言ってるから大丈夫なんだ、言えるんだってなったらいいなとは思っています。
動画が公開されてから、ネット上で大きな反響が寄せられている。
YouTubeのコメント欄には、「あなたたちのおかげで、下の世代がもっと生きやすくなります」「勇気づけられた」といった書き込みや、「自分らしく貫いてください」など、横山さんを応援する声が相次いでいる。