東京都・世田谷区は、同性パートナーのいる水防業務の従事者や学校医らにも遺族補償の支給を検討する。6月15日の区議会本会議で、上川あや氏の質問に区の担当者らが答えた。実現すれば、同性カップルの遺族にも補償金を支払う制度は日本初とみられる。
法律婚や事実婚関係の異性カップルは、法律や自治体の条例によって遺族補償の支給対象となっている。
上川氏は一般質問で、区の要請で動員された水防活動や応急措置の従事者、学校医・学校歯科医・学校薬剤師が業務中に亡くなった場合、同性パートナーが遺族一時金や遺族年金の支払い対象から排除されていると指摘。「同性パートナーにも平等の遺族補償を担保してゆく必要がある」と話した。
これに対し、池田豊総務部長は「亡くなられた方の同性パートナーを対象に、区が何らかの給付制度を独自に設けることは既存の法制度と矛盾するものではなく、法制度を補完するものとして可能であると認識している」と答弁。
菅井英樹危機管理部長と知久孝之教育総務部長らはそれぞれ「課題の整理を行い、独自の補償制度を検討していく」と述べた。
世田谷区は2015年に「同性パートナーシップ宣誓制度」を創設して以来、区内の同性カップルの権利擁護に向けて積極的な姿勢を示している。
2020年4月に同性パートナーのいる職員も結婚・出産休暇を利用できるよう区規則を改正したほか、今年2月には新型コロナウイルスで死亡した人の遺族が受け取れる「傷病手当金」を同性パートナーも同額受け取れるようにした。
自身がトランスジェンダーであることを公表している上川氏は、ハフポスト日本版の取材に対し、こうした独自の制度は他の自治体でも「応用が効く」と話した。
「先例があると、他の自治体も導入しやすくなります。家族としての補償はどうあるべきなのかという議論を、国も含めて深めてもらいたいです」
「パートナーを亡くしたことの痛みや、損なわれる生活基盤というものは、相手が異性か同性かに全く関わりがないこと。平等に補償をするということが、当たり前になってほしいと思います」