大坂なおみ選手が全仏オープンの記者会見に出席しない意向を表明、その後にうつ状態を告白し、試合についても棄権したことが議論を呼んでいる。
記者会見がアスリートのメンタルヘルスに与える悪影響は無視できず、見直しが必要だと、大坂選手を支持する声があった一方で、「プロアスリートならばスポンサー企業に配慮するのは当然」という批判も。
では、実際にスポンサー企業はどう考えているのだろうか?
ハフポスト日本版は大坂選手のスポンサーやパートナーなどの関係にある10社に見解やコメントを求めた。
記者会見への出席について、回答したのは森永製菓だけ。「大坂なおみ選手ご自身が、熟考されて下した結論ですので、最大限尊重したいと考えます」とコメントした。
ほかはノーコメントとして記者会見についての見解を表明することはなかったが、NIKE、ANA、日産自動車、Mastercardの4社は大坂選手への支援表明や、考えを尊重すると回答。回答があった9社すべてから、本人の健康や回復を願うといったコメントが寄せられた。
各社には、以下の4点について見解を求めた。
・大坂選手がうつ状態であると明かし、全仏OPを棄権したことについて
・プロ選手がアスリートのメンタルヘルスを理由に大会に関係する記者会見に出席しないことについて
・大坂選手に対して罰金を科すという大会主催側の方針、また「改善を目指す」という声明について
・プロスポーツ選手の心身の健康を守るためにできるサポートについて
回答は以下の通り
NIKE(プロアスリート契約)
▽大坂選手がうつ状態であると明かし、全仏OPを棄権したことについて
大坂なおみ選手が自身の心の健康に関して発表されましたが、私たちはその勇気を讃え、彼女の回復を祈りつつ支援を続けます。
日清食品(所属契約)
▽全体への回答
先ずは、大坂なおみ選手の一刻も早い回復を祈念するとともに、引き続きの活躍を願っております
ANA (スポンサー契約)
▽全体への回答
大坂なおみ選手のスポンサーとなっておりますが、マネジメントを行っていないため、個別の事象に関してコメントを出す立場ではないと考えております。大坂選手が再び元気な姿でテニスコートに戻りご活躍されることを望みながら、引き続きスポンサー社として出来る限りのサポートをして参ります。
日産自動車(アンバサダー契約)
▽全体への回答
日産は、当社のアンバサダーを務める方がご自身の考えを表明されることを尊重しております。大坂選手の一日も早いご快復をお祈りしております
ヨネックス(用具使用契約)
▽大坂選手がうつ状態であると明かし、全仏OPを棄権したことについて
大坂選手には健康に留意し、まずは自分のペースで元気を取り戻して欲しい。コートに戻ってくる日を楽しみにしています。
Mastercard
▽全体への回答
大坂なおみ選手の決断は、自身の健康と健全性を優先することの重要性を思い出させてくれました。Mastercardは、コートの内外で重要な問題に取り組む大坂なおみ選手の勇気をたたえ、応援しています
森永製菓(広告契約)
▽大坂選手がうつ状態であると明かし、全仏OPを棄権したことについて
健康を第一に体調を整えていただき、活躍する姿を心待ちにしています。
▽プロ選手がアスリートのメンタルヘルスを理由に大会に関係する記者会見に出席しないことについて
大坂なおみ選手ご自身が、熟考されて下した結論ですので、最大限尊重したいと考えます。
▽プロスポーツ選手の心身の健康を守るためにできるサポートについて
森永製菓ではプロアスリートへのトレーニングや栄養指導を行う機能として「森永トレーニングラボ」を所有しております。
HYPERICE(アメリカ本社が契約)
▽全体への回答
大阪なおみ選手の一日も早い回復を願っておりますが、今回の件はコメントを差し控えさせて頂きます。
WOWOW(スポンサー契約なし、試合放送などを通じて支援)
▽大坂選手がうつ状態であると明かし、全仏OPを棄権したことについて
アスリートは身体だけでなくメンタルヘルスも大変重要だと思っております。一刻も早い彼女の回復を願っております。
▽プロスポーツ選手の心身の健康を守るためにできるサポートについて
放送局として、アスリートの活躍を世の中に伝え、スポーツの感動をお客様にお届けしていくのが使命と考えております。それがスポーツ文化の醸成につながり、ひいてはスポーツ選手の育成や環境向上の一助になれば幸いです。
大坂選手の公式サイトにロゴが記載されている11社のうち、日本に拠点のある10社を対象に取材した。
この全仏オープンで、大坂選手は、自身やアスリートのメンタルヘルスを守ることが優先されるべきだという理由で、5月27日に記者会見をしないと表明。実際に1回戦の後に記者会見を開かず、1万5000ドルの罰金を課せられた。主催者側は、四大大会追放もあり得ると厳しい姿勢を見せていた。
大坂選手は6月1日、2018年からうつ状態を抱えていたと明かし、2回戦棄権を発表。記者会見をしないと決めたのは、大会前に大きな不安を感じていたからだと説明した。
大坂選手の決断に、アスリートから賛同の声が寄せられていた。
アメリカのNIKEやMastercardなど、海外本社がスポンサー契約などを結んでいる企業が、大坂選手を支持する声明を発表している。
アスリートのメンタルトレーニングに携わるスポーツドクターの辻秀一氏は、ハフポスト日本版の取材に、アスリートは試合や活動の中で「環境・出来事・他人の影響を受けることが多いので、ストレスが高まり、心の状態に揺らぎやとらわれが生まれやすい」と指摘。
メンタル不調は様々な外的要因が大きく影響していることを念頭に、本人の問題としてだけではなく「指導者や大会運営側、メディアも含めて、社会として受けとる必要があります」と語っていた。