経済産業省に勤務する性同一性障害の女性職員が、戸籍上の性別が男性であることを理由に女性用トイレの利用や人事異動を制限するなどしたのは違法だとして国を訴えていた裁判の控訴審判決が5月27日、東京高裁であった。
北澤純一裁判長は原告側の訴えを棄却し、職員の逆転敗訴となった。
原告の職員は戸籍上男性で、現在は女性として生活している。健康上の理由で、性別適合手術を受けていない。
男性として経産省に入省し、1998年に性同一性障害の診断を受けた。職場とは2009年から話し合いを重ね、2010年から女性職員として勤務を開始。家庭裁判所の許可を得て戸籍上の名前も変更した。
しかし経産省は女性用トイレの使用について、他の女性職員との間でトラブルが生じる可能性があるとして、勤務しているフロアから2階以上離れている女性トイレを利用するよう制限した。
更に2011年には、性別適合手術を受けて戸籍上の性別を変更をしなければ異動できないと告げられた。人事部と協議をすると、性別変更手続きをしないのであれば異動先で自身が戸籍上は男性であるとの説明会を開くか、説明会を開かない場合は女性用トイレの使用は認めないことを条件とされた。
職場の処遇改善を求めて人事院に行政措置要求をしたが職員の要求を退ける内容になったため、その判定の取り消しを求めて国を提訴した。
一審判決では経産省の対応の違法性が認められ、その後双方が控訴。経産省が女子トイレ利用をめぐり意見聴取を行なった際、同僚2人に職員が性同一性障害者であることを知らせていたことが一審で分かり、職員側は戸籍上の性別を暴露(アウティング)されたとして損害賠償を控訴審で求めていた。
加えて、一審で一部しか認められなかった行政措置要求判定の全面取り消しなどを求めていた。
経産省は判決に対し、以下のコメントを出した。
「国の主張が一部認められ、一部認められなかったと承知している。今後については判決の内容を十分に精査した上で、関係の省庁と協議をして適切に対応したい」
【UPDATE: 経産省のコメントを追記しました】