「東京五輪・パラリンピックは中止すべき」信濃毎日新聞が社説で表明

丸山貢一論説主幹はハフポスト日本版に対して「ここ1、2カ月の間、論説委員の中で議論し、開催が迫ったいまのタイミングで出すべきだと判断した」と説明した。
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信濃毎日新聞社は5月23日付の社説で、東京オリンピック・パラリンピックを中止するよう政府に求める意見を表明した。

医療体制の崩壊、開催意義の喪失、国民分断の3点をあげて、「東京五輪・パラリンピックの両大会は中止すべきだ」と訴えた。

これまで海外メディアからは五輪の中止を求める意見は出ていたが、日本のメディアが中止すべきと表明したことは、踏み込んだ対応と言える。

「何のための、誰のための大会かが見えない」

社説では、新型コロナウイルスの感染拡大で東京などで緊急事態宣言が発令されていることや医療への負担、経済的に追い込まれている人たちの存在に触れ、「7月23日の五輪開幕までに、感染状況が落ち着いたとしても、持てる資源は次の波への備えに充てなければならない」と指摘。

「東京五輪・パラリンピックの両大会は中止すべきだ」と訴えた。

ワクチン接種の状況について「予防効果が高まるとされる『集団免疫』の獲得はおろか、開幕の時期までに高齢者への接種を終えるめども立っていない」と疑問を呈した。

また、海外観客の受け入れ断念や、選手との交流も見込めないことから、「各国から集う人々が互いに理解を深め、平和推進に貢献する五輪の意義はしぼみつつある」とも指摘した。

さらに、菅義偉首相がバイデン米大統領との共同記者会見で、五輪開催を「世界の団結の象徴」と位置づけたことに対して、「何のための、誰のための大会かが見えない」と批判。「反対の世論は収まらず、賛否は選手間でも割れている。開催に踏み切れば、分断を招きかねない」と懸念を示した。

最後に「国民の命と暮らしを守る決断が、日本政府に求められる」と結んだ。

同社の丸山貢一論説主幹は5月23日、度重なる緊急事態宣言の発令を踏まえて「ここ1、2カ月の間、論説委員の中で議論してきた」とハフポスト日本版の取材に説明。

「開催が迫ったいまのタイミングで出すべきだと判断した」と語った。

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