化粧品大手「DHC」は、公式オンラインショップ上に掲載している吉田嘉明会長名の文章を5月13日までに更新し、製品を宣伝する新聞の折込広告の掲載を折込会社から断られ、日本テレビからはCM出稿を拒否されたと主張した。
公式オンラインショップ上には、在日コリアンへの蔑称を交えた呼称を使うなどした差別的な文章が掲載され続けており、批判の声が上がっている。
DHCは、テレビCMを通じても商品宣伝を行なってきた企業としても知られる。
同社CMの放送状況について、5月12日までに民放キー局5社に取材した。
DHCのCMを放送しているのか?
民放キー局に対して、下記の点を尋ねた。
・現在、DHC社の提供番組を放送しているか
・現在、DHC社の広告を放送しているか
・公式サイトに差別表現が掲載され続ける場合、今後、DHC社から広告出稿の依頼があった場合にどう対応するか
・広告出稿元企業・出稿を希望する企業に、差別的行為・人権侵害が疑われる事案などがある場合、どのように対応することになっているか
これらの質問に対する、各社の回答は下記の通り。
日本テレビ「個別の企業のCMに関してはお答えしておりません。CMに関しては、放送基準に基づき内容が適正であるかを判断しています」
テレビ朝日「CMの取り扱いについては民放連の放送基準等に沿って都度判断しております。個別の取引に関しては従来お答えしていません」
TBS「個別の案件については、従来、お答えしていません」
テレビ東京「内規や個別の案件についてはお答えしていません」
フジテレビ「CMの取り扱いについては、日本民間放送連盟の放送基準に加え、様々な内規を設けておりますが、その具体的な内容については回答を控えさせていただきます。また、個別企業のCM契約に関するご質問にはお答えしておりません」
いずれの社も「個別の取引については答えない」という立場だった。
また、自社の「放送基準」などの中で人権についてどのように表記しているかも確認した。この質問については、テレビ東京以外の4社が、自社の取り決めなどを取材に説明した。
TBSは、「放送基準」などについて尋ねた全般的な質問に対し、「当社として、差別や人権侵害はあってはならないことだと考えています」と、自社の考えを表明した。
各社が設ける放送基準「尊厳を傷つけてはならない」
自社の基準の中で、人権についてどう表記しているのか。
日本テレビは「番組基準」の中で、「すべての国および人種・民族は公平に取り扱い、その尊厳を傷つけてはならない」などとしている。
テレビ朝日は「放送番組基準」で、「公共の福祉と産業経済の繁栄に貢献し、社会の良識と信頼にこたえるものとする」としている。
TBSは「放送基準」の中で「基本的人権と世論を尊び、公正な立場を守り、自律を確保する」などとし、また「グループ行動憲章」の中では「私たちは、人権を尊び、多様な価値観を重んじ、いかなる差別・偏見とも決別します」と明記している。
フジテレビは公式サイトの「人権や青少年問題について」というページの中で、「放送内容が国民の基本的人権を擁護するものとなるよう心がけております。特に、人権や児童・青少年への配慮については、細心の注意を払っています」などとしている。
テレビ東京は、この点についての質問への回答はなかったが、公式サイトの「よりよい放送をめざして」というページには、「人権を尊重する自由で平和な社会の実現に貢献することを使命と考えています」などと記している。
民放連「人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」
民放各社の姿勢の基本にあるのは、日本民間放送連盟の「放送基準」だ。
ここでは、第1章「人権」で「人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」などと明記し、広告の取り扱いについての章も設けられている。