第93回アカデミー賞の授賞式が、日本時間4月26日に行われます。
世界最大級の映画の祭典であり、豪華な出演者やそのスピーチにも注目が集まるアカデミー賞。日本で見る方法や、注目ポイントなどをまとめました。
【記事の主な内容】
・日本で見る方法は?
・本命は『ノマドランド』? 他の有力作は?
・監督・俳優ともに、多くの「初」が誕生
・異例のルール変更で、Netflixなど躍進
・コロナ禍の「特殊な事情」。アカデミー賞の行方
▼日本で見る方法は?
日本では、WOWOWがアカデミー賞授賞式の模様を独占生中継。4月26日午前8時30分からWOWOWプライムおよびWOWOWオンデマンドで放送されます。
2021年は新型コロナの影響を受け、授賞式は会場を分散し、アメリカ・ハリウッドのドルビー・シアターなどで対面形式で行われます。
▼作品賞本命は『ノマドランド』? その他の有力候補は?
最注目の作品賞、ノミネートされたのは、以下の8作品です。
『ファーザー』 フロリアン・ゼレール監督
『Judas and the Black Messiah』 シャカ・キング監督
『Mank/マンク』 デヴィッド・フィンチャー監督
『ミナリ』 リー・アイザック・チョン監督
『ノマドランド』 クロエ・ジャオ監督
『プロミシング・ヤング・ウーマン』 エメラルド・フェネル監督
『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』 ダリウス・マーダー監督
『シカゴ7裁判』 アーロン・ソーキン監督
中でも、「本命」と囁かれているのが『ノマドランド』。中国出身のクロエ・ジャオ監督が手掛けた本作は、アメリカ西部の路上に暮らす高齢の季節労働者や車上生活者の姿を描きます。作品賞のほか監督賞、編集賞など、全6部門でノミネート。主演のフランシス・マクドーマンドは主演女優賞の候補にもなっています。
多くの国際映画祭やアカデミー賞前哨戦でも最高賞に輝いていることから、作品賞受賞が有力視されています。
そのほかには、韓国からの移民一家が主人公の『ミナリ』、犯罪者への女性の「復讐」を描いた『プロミシング・ヤング・ウーマン』などにも注目が集まっています。
▼監督・俳優ともに、多くの「初」が誕生。
2021年のアカデミー賞、ノミネート発表時には多くの「初」という言葉が飛び交いました。たとえば、以下のような快挙が見られました。
【監督賞】
複数の女性の監督が初めて同時にノミネート。『ノマドランド』のクロエ・ジャオと、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネルが候補に。また、クロエ・ジャオは、アジア系女性としても初ノミネート。
【主演男優賞】
『ミナリ』のスティーヴン・ユァンがアジア系アメリカ人として、『サウンド・オブ・メタル』のリズ・アーメッドがムスリムとして、それぞれ初めてノミネート。
【助演女優賞】
『ミナリ』のユン・ヨジョンが韓国の俳優として初めてノミネート。
2021年の受賞候補は、作品、俳優、監督において大きく多様化が進みました。俳優がノミネートされる部門では20人中9人が非白人で、特に主演男優賞では、非白人が過半数を占めています。長年「白人男性優位」と指摘されてきたハリウッドに、変化の兆しが見えています。
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▼NetflixやAmazonなど配信作品の躍進
新型コロナの影響を受け、ニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市の映画館が長期間閉鎖されたため、2020年は新作映画の劇場公開がほぼ止まってしまいました。
そうした状況ではアカデミー賞の候補作品が少なくなることから、今回はルール変更を余儀なくされました。劇場上映を想定していたものの、ストリーミング配信になってしまった作品には、ノミネート資格が与えられることになったのです。
Netflixのオリジナル映画『Mank/マンク』は最多10部門でノミネート。同じくNetflixの『シカゴ7裁判』やAmazonの『サウンド・オブ・メタル』も作品賞にノミネートされ、脚光を浴びることになりました。
Netflixの作品が初めて作品賞にノミネートされたのは、2019年の『ROMA/ローマ』。いまだ作品賞受賞は叶わぬものの、年々その存在感は増してきています。 配信作品をめぐるルール変更は今回が例外的な措置のようですが、ストリーミングサービスの利用者が多くなる中、今後の動向からも目が離せません。
▼コロナ禍の「特殊な事情」。来年以降はどうなる?
アカデミー賞では、2024年から作品賞の選考に新たな基準が設けられ、出演者、スタッフなどにおいて、より多様性を重視することを掲げました。
この背景には、「#OscarsSoWhite(白人ばかりのアカデミー賞)」という批判や、ハリウッドで起こった#MeToo運動、そしてアカデミー賞の授賞式で多くの映画人が、ハリウッドにおける不平等や格差を繰り返し訴えてきたことなどの影響が考えられます。今年のノミネーションは、その新基準運用に向けた第一歩とも解釈できそうです。
ただし、今回はコロナ禍という、例年にない特殊な状況で行われることも無視できません。映画館が通常営業に戻り、延期になっていた大手映画スタジオの大作が公開を迎えた時、配信作品をどう評価するのか、そして多様性・包摂性をどう反映していくのか。来年以降のアカデミー賞の行方にも注目したいと思います。
(若田悠希 @yukiwkt/ハフポスト日本版)
身近な話題からSDGsを考える生番組「ハフライブ」。4月は「アカデミー賞×SDGs」というテーマでお届けしました。社会や政治を映す鏡「アカデミー賞」は、2021年という時代をどう映すのか?映画界が抱える、SDGsのジレンマとは?映画監督の深田晃司さん、朝日新聞記者の藤えりかさんと濃密に語り合った90分です。