国立成育医療研究センターは4月15日、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性を対象とした調査の結果、治療開始初期の時点で54%に軽度以上の抑うつ症状があったことが分かったと発表した。
不妊治療を受ける女性に対する精神的なケアの重要性が改めて浮き彫りになった。
「経済だけでなくメンタルヘルスへの支援を」
研究を行ったのは、社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループ。
体外受精などの高度不妊治療を受ける女性約500名(主にこれから治療を開始する人や、採卵2回までの人)を対象に、メンタルヘルスやQOL(生活の質)などを分析した。参加者は複数の医療機関及びインターネットを通じて集めた。
睡眠や食欲・体重などに関する項目を自己評価する「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」を使った調査では、抑うつ症状について「正常」が45%だったのに対し、「軽度」が32%、「中等度」が17%、「重度」が5%、「きわめて重度」が1%。小数点以下があるため合計すると「軽度」以上が54%となった。
また、年代別に見ると20代では軽度以上の抑うつ症状ありが78%と他の年代に比べて高かったという。
身体的・精神的健康についての質問に自己記入する「健康関連QOL尺度(SF-12)」を使った調査でも、社会生活機能や心の健康などの項目が標準値より低かった。
高度不妊治療は数年以上の長い期間に及ぶことも少なくないが、初期段階ですでに精神的な不調が出ていることも多いことが明らかになった形だ。
グループは、日本でこうした大規模な調査が行われてこなかったと指摘。「現在、不妊治療の経済的側面への支援の拡充(保険適用)の議論が進んでいますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても支援が必要であることが示唆されました」としている。
海外の研究では、メンタルヘルスの不調は治療の中止や終了と関連するとの報告もあるという。グループは今後追跡調査を行い、治療が長期化した際の変化などについても分析する。