選択的夫婦別姓を求める共同声明、政府に提出へ。経営者ら19人が賛同者を募る

「望む人だけが改姓し、望まない改姓はゼロにする」。選択的夫婦別姓制度の導入を求め、企業経営者たちが連帯して共同声明を発表しました。
「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の共同呼びかけ人
「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の共同呼びかけ人

選択的夫婦別姓制度に賛同する企業経営者19人が4月1日、選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会を発足した。ドワンゴ代表取締役社長・夏野剛さんやサイボウズ代表取締役社長・青野慶久さん、ディー・エヌ・エー会長の南場智子さんらが呼びかけに参加しており、さらなる賛同者を集めた上で、法制化を求める共同声明を菅首相らに提出する。

企業経営者、制度を求めて連帯の動き

日本では法律で夫婦同姓しか認めておらず、結婚する女性の9割が夫の姓に改姓している。

「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」は、同姓にするか、別姓にするか、自由に選べる「選択的夫婦別姓制度」の導入を求めて発足された。

「望む人だけが改姓し、望まない改姓はゼロにする」ため、法改正を求める共同声明を発表した

4月25日まで1000人を目標に企業・団体の経営者、役員からの賛同を募り、5月初旬にも菅義偉首相や関係閣僚、主要政党に共同声明を提出するという。

▼共同声明の内容

私たちは、性別によらず能力を発揮し、自分らしく働けるダイバーシティ(多様性)に富んだ社会を実現するために、選択的夫婦別姓制度の法制化に賛同します。

声明の呼びかけ人には、ITや生命保険、証券、食品宅配などの企業経営者ら19人(下記)が名を連ねた。

賛同者はGoogleフォームやメールで募っている。

▼共同呼びかけ人(50音順)

青野慶久さん サイボウズ株式会社  代表取締役社長
荒金雅子さん 株式会社クオリア 代表取締役社長
金丸恭文さん フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長グループCEO
駒崎弘樹さん 特定非営利活動法人フローレンス 代表理事
小室淑恵さん 株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
篠原秀典さん 住友生命保険相互会社 取締役代表執行役副社長
鈴木世津さん ヒューネクスト株式会社 代表取締役
髙島宏平さん オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長
田代桂子さん 大和証券グループ本社 取締役執行役副社長
多田荘一郎さん GEヘルスケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼CEO
田中邦裕さん さくらインターネット株式会社 代表取締役社長
辻愛沙子さん 株式会社arca 代表取締役社長
冨山和彦さん 株式会社経営共創基盤(IGPI) グループ会長
夏野剛 さん 株式会社ドワンゴ 代表取締役社長
南場智子さん 株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長
藤森義明さん 日本オラクル株式会社 取締役会長
村上臣さん 元Yahoo! JAPAN 執行役員兼CMO
盛田淳夫さん 敷島製パン株式会社(Pasco) 代表取締役社長
山田岳人さん 株式会社大都 代表取締役

「夫婦どちらかが改姓しなければ婚姻できない現制度は非合理」

選択的夫婦別姓制度をめぐる議論は政府内でも進んでいるが、与党である自民党内で賛成派と反対派が対立しているのが現状だ。

2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画は、当初は「選択的夫婦別姓」という文言を含めた踏み込んだ内容だったが、慎重派の反発を受けて最終案では文言が削られた

前述したように、日本では結婚する女性の9割が改姓している。

改姓手続きの不都合や不利益、旧姓の通称使用に伴う混乱を多くの女性が被っており、国連は日本に対し、夫婦同姓を求める規定を「差別的」だとして何度も廃止を求める勧告を出している

「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」は、そうした状況を受けて発足した。

同会は、男女間で平等な状態になく、多くの女性がキャリアに影響を受けていると指摘。「夫婦のどちらかが改姓をしなければ婚姻できない現制度は非合理といえます」と訴えた。また、職場で旧姓の通称使用を義務付けることで、企業での確認作業が煩雑になり、業務負担が生じているとも強調した。

「当たり前のことを当たり前にできないことが、日本の生産性の低さにつながっている」

同会の共同代表となった夏野剛さん(株式会社ドワンゴ 代表取締役社長)は、「女性活躍がこれだけ重要視される中で、結婚によって姓を変えているのがほとんど女性という状態。しかも姓を変えることでの不利益はキャリア形成上大きいので、早く法改正すべき」と指摘。「当たり前のことを当たり前にできないことが日本の生産性の低さにつながっています。身近な問題から変えていきましょう!」訴えている

夫婦別姓を選べない今の戸籍法は法の下の平等に反するとして、国に損害賠償を求める訴訟を起こしたサイボウズ代表取締役社長・青野慶久さんも、共同代表に加わった。

青野さんは、「現行制度は、名字の変更や使い分けに対する負荷をビジネスの現場に押し付けており、企業の生産性を下げる一因となっている」とコメント。

「次代を担う社員たちの願いを受け止め、ぜひご賛同をお願いいたします」と賛同を呼びかけている。

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