競泳女子の池江璃花子選手が白血病の闘病生活から競技復帰を果たす軌跡をうつしたドキュメンタリー映像が、3月29日に公開された。映像を手がけたのは、映画監督の是枝裕和さんだ。
池江選手の歩みを描く短編映像
題名は「The Center Lane(センターレーン)」。
スキンケアブランドのSK-IIが新たに設立した動画スタジオ「SK-II STUDIO」の第1弾として公開された。今後スタジオでは、女性たちが抱える様々なプレッシャーを取りはらうことを目的とした動画を公開していくという。
同社は2020年に池江選手とパートナーシップを結んでおり、同年5月、白のタンクトップにベリーショート姿で出演するコラボ動画を発信。「髪の毛がないことが恥ずかしいことじゃない」と池江選手が思いを語り、大きな反響を呼んだ。
新たに公開されたドキュメンタリー映像を手がけたのは、映画監督の是枝裕和さん。
約5分間にわたる動画では、闘病生活を経て競技復帰を目指す池江選手の歩みをやわらかなタッチでうつしだした。是枝さんはこの作品で初めてアニメーション効果にも挑戦したという。
「病気になって、たくさんの方の気持ちがわかるようになった」
動画には、池江選手が闘病生活を経て心境の変化を語る場面もあった。
「病気になる前は、アスリートとしての自分のことしかわからないから、自分が自由にこうしてプールにいることとか生きていることが当たり前だった」と振り返った池江選手。「自分がとにかく強くなることだけを考えて過ごしていた」という。
しかし、白血病だと診断されたことをきっかけに、「たくさんの方の気持ちがわかるようになった」と話す。
「やっぱり病気になって、アスリートとしての池江璃花子と病気を患った池江璃花子という二人の人間がいることによって、本当にたくさんの方の気持ちがわかるようになったというか...自分にとって『生きていること』っていうのがひとつの経験、大きな経験になっている」
また、「周りの人たちのために泳いでいるわけじゃなくて、自分が水泳が楽しいから泳いでいる」と、競泳への思いの強さを感じさせる言葉も印象的だ。
「自分が泳いでいるだけで勇気をもらったって言ってくださる方がたくさんいたりするので。だけどよく考えたら、周りの人たちのために泳いでいるわけじゃなくて、自分が水泳が楽しいから泳いでいるわけであって、人に左右される話ではないかなって思っています」
「『圧』にならない言葉を選ぶとすると、『ずっと見てるよ』」
映像を手がけた是枝さんが、ハフポスト日本版にコメントを寄せた。
是枝さんによると、池江さんに初めて会ったのは2020年の4月ごろ。
「10代とは思えない落ち着きと、人の話をきちんと受け止めて自分の言葉で話せるコミュニケーション能力の高い人」という第一印象をもったという。
こだわったのは、池江選手へのインタビューで出た「センターレーン」という言葉だという。競泳には、速い選手はセンターレーンに配置されるというルールがあり、池江選手は「私のための場所」だと話したそうだ。
「それを『私のための場所』だと、目を輝かせて話した彼女の表情は印象に残ったので、その一言にこだわって軸にしました」
池江選手は、東京オリンピックの代表選考会を兼ねた4月の日本選手権で、女子100メートル自由形など合わせて4種目にエントリーしている。
大会を控える池江選手に伝えたいことを聞かれると、以下のように答えた。
「好きじゃない言葉で、使いたくない言葉の金メダルなものですから・・・。『頑張って』という言葉も彼女にかける言葉としては不適切なくらい本人頑張ってますし、『期待してます』も『いやもう期待に応えてるよ充分』と思いますので、なるべく『圧』にならない言葉を選ぶとすると、まあ『ずっと見てるよ』くらいですね。今かけられる言葉は」