桜の開花宣言が相次いで出され、早いところでは満開を迎えているところもあるこの時期、ピンクが濃い桜並木を歩くと息をのむような美しさに圧倒されます。
そんな時、ふと桜の木の下を見るとまだ散る前の花弁がついたままの花が、そっくりまるごと落ちているのを見かけることがあります。時には、ヘリコプターのように花が回転しながらひらひらと優雅に落ちてくるのに出会うことも。
実はこの「桜の花落し」、風でも虫でもない犯人がいるそうです。詳しい話を、スズメを中心に野鳥を撮影している写真家、中野さとるさんに伺いました。
桜の花を落としたのはスズメ!?
「桜の花をまるごと落としているのは、多くはスズメです。スズメが花ごと食いちぎって、花のつけ根に入っている蜜を吸っているのです。花の中にくちばしを入れるわけではないので、メジロなどのように花粉をくちばしなどにつけて受粉を媒介することもありません」と話す中野さんは、次のように続けます。
「この行動は、ただ蜜を吸うだけなので『盗蜜』と言われています。花ごと食いちぎって、蜜を吸ったらポイ、というのは桜の花には気の毒ですが、スズメが花をくわえている姿はとても愛らしく、許してやりたくなります」(中野さん)
確かに桜の木の下に花が落ちているのは見かけることがありますが、その犯人が身近な鳥、スズメのしわざだったとは驚きです。
ヒヨドリやメジロは蜜だけを吸える
ヒヨドリやメジロもスズメと同様に花の蜜を吸いますが、蜜の吸い方が全く違うようです。
「この時季は桜だけでなく梅や桃、アンズなどの花の周辺でヒヨドリやメジロを見かけます。都市部でも身近に観察できる鳥です。ヒヨドリもメジロもくちばしがとがっていて細いので、蜜を吸うときは花の根元までくちばしを差し入れて蜜だけを吸うことができます。しかし、スズメはくちばしが短く太いので、くちばしを差し入れることができずに花を食いちぎるという行動に出るのです」(中野さん)
スズメがどんなに花落しをしても、何万輪と花がつく1本の木で十数輪とわずかなものなので、桜の木にとってダメージはなさそうとの調査結果もあるといいます。
桜を見上げるときには花だけでなく、スズメにも注目してみてはいかがでしょうか。トランペットを吹くように花をくわえる、愛らしいスズメを見ることができるかもしれません。
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