三重県議会で3月23日、性的指向や性自認を許可なく第三者に暴露する「アウティング」を禁止する条例が全会一致で可決された。アウティングを禁止する条例が都道府県で成立するのは初めて。
どんな条例なのか
可決されたのは、「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例案」。4月1日から施行される。
「性の多様性が理解され、全ての人の人権尊重、多様な生き方を認め合う社会」の実現を目的として定められる。
条例の最終案によると、性的指向または性自認を理由とした「不当な差別的取扱い」やカミングアウトの強制、アウティングについて、「してはならない」と明示。県の責務として、性の多様性に関する施策を推進することなどを定めている。
第四条 何人も、性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならず、 及び性的指向又は性自認の表明に関して、強制し、禁止し、又は本人の意に反して、 正当な理由なく暴露(本人が秘密にしていることを明かすことをいう。)をしてはならない。
「性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例案」最終案より
「社会全体の理解が広がり、共通認識に」 罰則は設けず
さらに、教育に携わる人や事業者に対して「性の多様性に関する理解を深める」ことや、「性の多様性を認め合うことができるよう必要な措置を講ずる」努力義務などを盛り込んでいる。
また、県民の役割として、「性の多様性に関する理解を深めるとともに、県が実施する性の多様性に関する施策に協力するよう努めるものとする」と定めた。
ほかにも条例では、人権教育の推進、県職員への研修、県での相談窓口の設置などを盛り込んでいる。
県の説明では、「社会全体の理解が広がり、共通認識となる」ことを目的としており、罰則規定は設けない。
日本でも差別を禁止する法律を 署名活動も
自治体のアウティング禁止条例は、2018年に東京都・国立市で初めて施行された。
アウティングやカミングアウトの強制の禁止を盛り込んだ条例案が可決されるのは、都道府県初となる。
EU加盟国や先進国など多くの国で、性的指向や性自認を理由とする差別を禁じる法律が制定されている。
一方で、日本では性的マイノリティーへの差別を禁止する法律はなく、当事者団体や支援団体は、差別の禁止を盛り込んだ「平等法」を制定するよう求めている。