アメリカ・ジョージア州アトランタにあるマッサージ店3カ所で銃撃事件が発生し、8人が亡くなるという事件が起きた。うち6人はアジア系の女性で、容疑者は白人男性だった。
朝日新聞などによると、容疑者は警察当局に対し「人種的な動機ではない」と供述しているが、当局は「ヘイトクライム(憎悪犯罪)ではないと判断するのは時期尚早だ」として、動機を調べている。
この事件を受け抗議の声が大きくなっており、アジア系の俳優らをはじめとした著名人たちも参加。コロナ禍のアメリカでは、アジア系を標的としたヘイトクライムが急増し、各地で抗議デモが起こるなど問題になっていた。
8人死亡の銃撃事件。何が起こったのか?
現地時間3月16日、アトランタにあるマッサージ店3店が立て続けに襲撃され、8人が亡くなり、うち6名はアジア系の女性だった。3件とも同一人物による犯行で、容疑者は21歳の白人男性だった。
当局は17日、容疑者を殺人の罪で訴追した。
容疑者はこのマッサージ店を度々訪れており、「性依存症を抱えており、はけ口を断ち切りたかった」との趣旨の供述をしているという。しかし、当局は「ヘイトクライムではないと判断するのは時期尚早だ」としている。
「私たちを殺すのをやめて」#StopAsianHateで抗議
この事件を受け、アジア及び太平洋諸島系を狙ったヘイトクライム撲滅を目指す団体Stop AAPI Hateは、「アトランタで報告されたアジア系アメリカ人女性を標的とした銃撃事件は、被害者家族、そしてひどい人種差別に悩まされてきたAAPI(アジア系、太平洋諸島系)コミュニティにとって、言葉にならない悲劇だ」とTwitterに投稿。
かねてより「#StopAsianHate」というハッシュタグをつけたアジア系差別への抗議の声はあがっていたが、今回の事件を受け、その声はより一層強くなっている。一時、アメリカにおいてTwitterのトレンド1位になるなど、抗議は大きねうねりを見せている。
著名人の中で先立ってアジア系に対するヘイトクライムに声を上げたのは、アジアにルーツを持つ著名人らだ。彼らは連日、SNSで情報を共有し、ニュース番組でヘイトクライムの実情について自らの経験を交えて明かすなどしている。
俳優のマーガレット・チョーは、Twitterで動画を公開。「私はすごく怒っている。昨日起こったことのせいで、悲しんでいる。私はアトランタに7年住んでいました」とし、「これはヘイトクライム。なぜそこに疑問の余地があるのかわからない。これはテロリズムで、ヘイトクライム。私たちを殺すのをやめて」と声を強めて訴えた。
これまでにもたびたびヘイトクライムに抗議していた俳優のダニエル・デイ・キムはこうコメントした。
「もしもあなたが心に憎しみを抱えているなら、あなたもこの問題の一部であり、その事実の前では罪を犯した人の人種は重要ではない。そして、助けられる力を持っているにもかかわらず、何もせずに傍観している人へ。あなたの沈黙は共犯です。#StopAsianHate」
俳優のオリヴィア・マンは、インスタグラムに憤りのメッセージを投稿するとともに、被害者とその家族への支援も呼びかけている。差別撤廃を目的とした声明への署名や家族への寄付、危機回避のための方法についても共有した。
オバマ元大統領やリアーナも発信
抗議しているのは、アジア系の著名人だけではない。
オバマ元大統領も複数のメッセージをTwitterで発信。
「パンデミックとの戦いが続く一方、アメリカでは銃による暴力が蔓延し、その対策が遅れている。犯人の動機はまだ明らかになっていないが、犠牲者の身元が判明したことで明らかになったアジア系に対する暴力の増加は、食い止めなければなりません」
歌手のリアーナは、抗議デモと思われる写真とともにコメントし、連帯の意を示した。
「アトランタで起こった事件は、残忍で悲劇的であり、決して珍しいことではありません。 AAPIを標的としたヘイトは絶え間なく続いており、それは受け入れられるものではない。胸が張り裂けるような思いで、私の心は、愛する人を失ったアジアのコミュニティとともにあります。憎しみは止まらなければなりません」
2020年、アジア系ヘイトクライムは4000件にのぼる
2020年初めに新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、アメリカではAAPIに対する人種差別的な攻撃が急増している。
ヘイトや差別を加速したのが、トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「カンフルー(カンフーとインフルを組み合わせた造語)」と呼び、アジア系へのヘイトを煽るような発言を繰り返してきた言動だとも指摘されている。
アトランタでの事件を受け、バイデン大統領は17日、記者団に対し「非常に懸念している。私はこの数カ月間、アジア系アメリカ人に対する残虐な行為について話していました。非常にやっかいな問題だと思う」と述べた。
Stop AAPI Hateの調査によると、2020年、アメリカにおけるアジア系を標的としたヘイトクライムに関連する事件は、およそ4000件を記録している。