フランスの風刺雑誌「シャルリー・エブド」が、また新たな論争を巻き起こした。
3月13日に発行された雑誌の表紙を飾ったのは、恐ろしい表情をしたイギリス王室のエリザベス女王が、ボロボロになったメーガン妃の首を膝で圧迫する様子を描いた風刺画。
「なぜメーガンはバッキンガム(イギリス王室の宮殿)をやめたのか」との見出しがついている。メーガン妃の吹き出しには「だってもう息ができないから!」と書かれている。
この風刺画は、2020年5月、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが、白人警察官に膝で首を押さえつけられて死亡した事件を暗示している。身動きが取れないフロイドさんは「息ができない、息ができないんだ」と苦しみながら訴えていた。
王室、子どもの肌の色で「懸念」
挑発的な漫画は、ヘンリー王子夫妻のインタビューに対するシャルリー・エブドの反応だった。3月7日にCBSが放送したインタビューで、メーガン妃は息子のアーチーちゃんが生まれる前、王室で子の肌の色についての「会話」や「懸念」があったことを明かしていた。
夫婦は誰の発言かを明言しなかったが、夫妻を取材したオプラ・ウィンフリー氏は、発言者がエリザベス女王でも夫のフィリップ殿下でもなかったことを明らかにしている。
ヘンリー夫妻のインタビューの映像が公表されたことを受けて、王室は声明を発表。その中で「特に人種の問題、提起された問題は懸念を呼ぶものです。記憶と異なる部分はあるかもしれませんが、非常に深刻に受け止めている」との見解を示した。
ヘンリー王子の兄ウィリアム王子は、その後記者団に「私たちは決して人種差別主義者の家族ではない」と語っている。
メーガン妃はインタビューで、王室メンバーとしての生活が非常に孤立していたため、自殺を考えたことがあるとも告白していた。
フロイドさんを想起させる描写に波紋
シャルリー・エブドの風刺画に対する見方は様々だった。
言論の自由として、漫画を掲載したメディアの権利を擁護する声が多く上がった。一方で、女王に対する攻撃的な描写を批判する人もいた。
ただ、メーガン妃とフロイドさんを重ねるような表現は多くの人にとって納得できるものではなかった。フロイドさんが亡くなった事件を、このように風刺画のモチーフとすることに対し、疑問視する声が相次いだ。
「このイラストは国境を越えないし、誰も笑わせたり、人種差別に抗わせようともしないだろう」といった意見や、「黒人の死とトラウマはこのように風刺の対象として使われるべきではない」などのコメントも寄せられている。
(ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。)