川崎市立の一部の小学校で、体操着の下の肌着の着用を禁止する指導が行われていることに対し、批判の声が寄せられている。
3月9日に開かれた川崎市議会の予算審査特別委員会の予算審議で山田瑛理議員が「多くの子どもが『嫌』と言っている」と言及したことが発端で、同市教育委員会は見直しも含めて検討することを明らかにした。
「体操服の下の肌着の着用を禁止されている」 保護者から相談あった
山田議員は委員会で「小学生のお子さんの保護者から体操服の下の肌着の着用を禁止されていると相談を受けました。大変驚きました」と前置きした上で、「要は、体操服の下はすぐ肌ということです。本当にそういう指導があるのか。高学年でも肌着を脱ぐことになっている学校はあるのか、またなぜそのような指導をしているのか」と質問した。
これに対し市教委側は「教育委員会としては指導は行なっておりません」と回答し指導については否定したが、「運動後の汗などによって、体を冷やさない等の児童の健康面や衛生管理面の配慮から、主に低学年の児童に対して肌着を着用しないよう指導している学校が一部あることを確認している」と認めた。
山田氏は同件について独自にアンケートを実施したと明かし、川崎市ではないが他の自治体では「高学年でもブラジャーが禁止になっている」という声が寄せられたことを報告。川崎市教委にも状況の調査を要求した。
山田氏は「低学年だから(肌着着用を禁止して)良いという訳ではありません」と指摘し、「小学生は性意識が芽生える非常に重要なタイミングです。性意識をしっかり育てるべき時期にも関わらず、それ逆行するような指導は間違っていると言わざるを得ません」と述べた。
肌着の着用禁止、保護者に周知なく
続けて山田氏は、肌着着用が禁止されているという事実を保護者が知らないことも問題だとして、「保護者に知らせることなく指導をしているのか」と質問。
市教委側は「肌着の着用につきましては、保護者への周知は行なっていない」と現状を報告した。
山田氏は市教委側の対応について「誠に遺憾」とした上で、「子どもにとっては絶対的な存在である先生から言われたことは、嫌だなという思いがあっても我慢して6年間過ごさざるを得ない訳です。一番大事なのは、当事者である子供達がどう感じているかということです」と言及。
これに対し市教委側は「児童の気持ちに配慮した指導が必要と考えている」と答えた。
山田氏は子どもたちの意見を聞いたとして、小学校低学年の子どもからも「気持ち悪い。嫌だ」という声が上がっていたと報告。「この気持ち悪い、嫌だという感情は性意識が芽生えているとても望ましい感情であり、それを育ててあげるのが教育です。(肌着の着用を禁止するという)指導が必要とお考えか」と小田嶋満教育長に質問。
小田嶋教育長は「健康面や衛生管理面の配慮をするための指導は必要だが、児童の気持ちに配慮しながら適切に行うべきだ」と述べた。
「肌着を脱がすことが唯一の指導方法だとしたら間違っている」と指摘
山田氏は「健康面や衛生管理面の配慮でしたら、例えば体育後は新しい肌着に着替えるといった他の指導の仕方がある。肌着を脱がすことが唯一の指導方法だとしたら間違っていると思います。市内一律でやめていただきたい」と小田嶋教育長に要望。
小田嶋教育長は「改めて各学校の状況を調査した上で、今後、見直しも含めて検討したい」と話した。
“胸の成長”を確認できた場合のみ着用を認めるケースも
朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)は3月15日、小学校での肌着着用禁止の問題を取り上げた。
番組は全国の小学生の児童の保護者の聞き取り内容を紹介。肌着の着用が禁止される理由として「皮膚の鍛錬」が挙げられていることや、担任の男性教師が個別に児童を確認し“胸の成長”を確認できた場合のみ着用を認めるケースがあることを伝えた。
Twitterでは15日午前、「肌着禁止」「体操服の下」「胸の成長」「皮膚の鍛錬」などの言葉が軒並み日本のトレンド入り。
ネット上では「明らかに間違った指導」「禁止の理由がおぞましくて吐き気がする」「デリケートな問題。これを機に本当に変えていかないと」など、批判の声や意見が相次いで寄せられていた。
ハフポスト日本版は3月15日、川崎市教育委員会に取材した。
今後の対応について、川崎市教委の学校教育部健康教育課の担当者は「3月9日の市議会での質問と要望を踏まえ、まずは12日から川崎市内の全小学校を対象とした現状調査を開始しました。各学校の状況を把握した上で、新年度に向けた見直しを行なっていきます」と回答した。
【訂正 3月15日午後3時】文中の小田嶋満教育長の記載について、「小田嶋教育長」と表記すべきところを誤って「小田教育長」と記載しておりました。お詫びして訂正致します。