2018年に正当な理由がないのに宗教団体「幸福の科学」の施設に立ち入ったとして、建造物侵入の罪に問われたジャーナリスト・藤倉善郎(ふじくら・よしろう)被告に対し、東京地裁は3月15日、取材活動は「建物の管理権を不当に侵害するものと言わざるを得ない」などとして罰金10万円、執行猶予2年の判決を言い渡した。
被告は判決後、弁護団とともに記者会見し、控訴する意向を明らかにした。
藤倉被告はニュースサイト「やや日刊カルト新聞」の運営者で、宗教団体やスピリチュアル団体などを取材対象とするジャーナリスト。2018年1月17日に、正当な理由がないのに東京都荒川区にある宗教団体「幸福の科学」の施設に立ち入ったとして建造物侵入の罪に問われていた。この施設は一般公開されていた。
これまでの公判で、検察側が罰金10万円を求めていたのに対し、弁護側は「取材目的の立ち入りは正当な業務行為にあたる」などとして無罪を主張していた。
また、藤倉被告は「建造物侵入罪と取材・報道の自由の兼ね合いが争われる刑事裁判はこれまで前例がない」としていた。
15日には東京地裁で判決が言い渡され、三浦隆昭・裁判長は「報道のための取材の自由は十分尊重に値する」とした一方で、藤倉被告が本来禁止されていた写真撮影をしていたこと、それに過去に繰り返し教団施設への立ち入り禁止を通告されていたことなどを挙げ、「建物の管理権を不当に侵害するものと言わざるを得ない」とした。
また判決では、藤倉被告が立ち入り禁止となった理由について、過去に「批判的な内容の記事を書いたことであったことがうかがえる」とし「被告人(藤倉被告)を一律に排除しようとする被害法人(幸福の科学)の意思決定のあり方の当否については議論のあり方もあろう」とした。
一方で、取材の中で「内部の写真を撮る必要性は明らかでない」「政治活動そのものを取材するような事案とは異なる」などと指摘し、藤倉被告に罰金10万円、執行猶予2年の判決を言い渡した。
藤倉被告は判決後、弁護団とともに記者会見を開き、控訴の意思を明らかにした。
藤倉被告は判決について「潜入取材などのイレギュラーな形ではなく、一般公開の施設に入って様子を見るのは基本的な手法だ。取材の自由や報道の自由が大きく損なわれる」と批判。「建造物侵入罪を濫用してメディアを抑えようとする人たちには、好都合な状況になってしまう」とも指摘した。
また、今後も同様の取材手法を続けるか問われると「取材自体をやめる気はさらさらない。取材のやり方を変えるのはジャーナリズムの敗北というのが本心だが、現実問題として考えると萎縮せざるを得ない」と話した。
幸福の科学は判決について以下のようにコメントした。
自由には責任が伴います。取材と称すれば何でも許されるわけではありません。当教団より何度も立ち入り禁止通告したにもかかわらず、教団施設への不法侵入を繰り返す被告人の行為は、神聖なる宗教施設の平穏を妨害するものです。本判決にても、「取材の自由も他人の権利を侵害することは許されない」、「管理権が(取材の自由に)劣後するものとは言えない」と示されています。被告人には、判決を真摯に受け止め、二度と不法侵入や教団施設の平穏を乱す行為をしないことを求めます。