「体型や服装の話をされて嫌な思いをした」
「付き合っているから性行為をしても良いと思っていたが、相手は乗り気でなかった」
こんな経験、ありませんか--?
『性的同意』についてわかりやすく解説するハンドブックを、性暴力を根絶するための活動に取り組む大学生らが制作した。
制作メンバーは、慶應大学の学生団体「Safe Campus Keio」と、ジェンダー平等を目指す一般社団法人「Voice Up Japan」の慶應支部の学生たち。Voice Up Japan慶應支部の出井希(いでい・まれ)さんは、制作のきっかけを次のように語る。
「大学内での性暴力は実際に起きているのに、日本では入学時のオリエンテーションで性的同意について教わる機会がほとんどありません。『性的同意』というワードを聞いたことがない学生も多く、自分が加害行為をしていることに気づかない人もいます。オリエンテーション以外の形で新入生や学生たちに知ってもらう方法がないかな、と考えました」
性暴力が「日常」に
全12ページのハンドブックには、そもそも性的同意とは何か、なぜ性的同意が必要かといった説明や、被害に遭ったときのキャンパス内の相談先などをまとめている。
「同意のない性的言動は、全て性暴力」と明記。「誰もが被害者/加害者になってしまう可能性があるからこそ、お互いの『したい』という積極的な意思を確認し合うことが必要」などと伝えている。
Safe Campus Keioが、学生や大学職員などを対象に2020年9月〜10月に実施した性暴力に関する調査結果(総回答数325件)も掲載した。
「不快な性的ジョークや性に関する話をされた」は回答者のうち19.7%、「同意なく体を触られて嫌な思いをした」は6.8%だった。「同意のない性行為をされた」は2.5%だった。関係性では知人の学生間が多く、特に後輩が先輩から被害を受けるケースが目立った。
性被害に遭ったことで、心身の不調、自己肯定感や人間関係への負の影響があるケースも複数あったという。
Safe Campus Keioの佐保田美和さんは、調査結果を踏まえ、「キャンパス内にも相談先はあるけど、被害を受けても『自分で解決できる』と考える人が多く、相談機関に訴えるケースはとても少ないことが分かりました。性的なジョークや望まないボディータッチを受けることが日常になってしまっていると感じます」と話す。
第三者にできること
性的なハラスメントを目の当たりにしたとき、近くにいる第三者として、できることがある。
ハンドブックでは、「覚えておきたい5つのD」として、次のような方法を紹介している。
1)注意をそらす(Distract)
⇒ハラスメント自体と関係ない話を始めて、事件を未然に防いだり、加害者の邪魔をしたりする。
2)第三者に助けを求める(Delegate)
⇒店の責任者や駅員、先生などに声をかけて介入してもらう、など。
3)証拠を残す(Document)
⇒安全な距離を保った上で、現場を動画で記録する。場所が特定できるよう周囲の目印も撮影し、日時も記録する。撮影後は、動画をどうしたいか被害者に確認する。
4)後で対応する(Delay)
⇒その場で対応できなくても、嫌がらせを受けた人に後から声をかけることで助けになる場合もある。
5)直接介入する(Direct)
⇒加害者に対して注意の言葉を投げかける。危険を伴うことがあるため、(1)安全が確保されていること (2)介入することで状況が悪化する可能性が低いこと (3)嫌がらせを受けている人が助けを求めていること、の3点を事前に確認した上で行う。
佐保田さんは、「性暴力を目にしたときにどう動いたらいいんだろうとか、何かできることはないかな、と悩んでいる人たちに、バイスタンダー(第三者、居合わせた人)としてできることがあると知ってほしい」と呼びかける。
ハンドブックの全ページは、専用サイトから無料でダウンロードができる。
(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)