「東日本大震災の余震とみられます」
大きな地震が発生した際、このようなアナウンスをテレビやラジオのニュースなどで頻繁に見聞きすることがあるが、この「余震」という言葉には落とし穴が潜んでいる。
東日本大震災から10年の今だからこそ、改めてその意味を正しく知っておいて欲しい。
地震対策強化などを目的とする政府の特別機関・地震調査研究推進本部事務局は2016年、「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」という資料を公表している。
これは、元々公表されていた資料を、同年発生し甚大な被害をもたらした熊本地震を受けて見直したものだ。
資料では、2016年に起きた熊本地震で「『余震』という言葉がより強い揺れは生じないと受け取られた可能性がある。安心情報と受け取られた可能性がある」などと問題点を指摘。
注意点の記述として「『余震』という言葉は、最初の地震よりも規模の大きな地震は発生しないという印象を与える。 震源の位置によっては最初に発生した大地震と同程度かそれよりも揺れが大きくなる場所もある」とも書かれている。
それを踏まえて、地震の見通しの呼びかけについて「余震」ではなく「地震」という言葉を用いて、同程度の地震への注意(一部領域ではより大きな地震への留意)を呼びかけることを盛り込んでいる。
2021年2月13日に東北地方で起きた最大震度6強の地震でも、地震直後から「今後1週間程度は余震に注意、警戒してください」などというアナウンスがテレビやラジオの報道で伝えられていたが、余震は決して、その前に発生した地震よりも規模が小さいとは限らない。
東日本大震災から10年を前に、政府の地震調査委員会は3月9日、東北地方太平洋沖地震から10年間の評価をまとめたが、「今後も長期間にわたって余震域や内陸を含む周辺で大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある」として注意を呼び掛けた。
今後も日本の各地で大きな地震が発生する恐れがある。再び大地震が起きた際、「余震はより強い揺れは生じない」という思い込みは禁物だ。