人前で裸になるのに抵抗がある。
タトゥーがある。そもそもコロナ禍だし....
そんな、サウナ利用の不安や抵抗感を全て解決してくるのが『ソロサウナtune』。
東京・神楽坂に2020年12月オープンし、人気を呼んでいる。
〝おひとり様〟ゆえ密を気にせず楽しめると、予約を取るのが困難なほど。コロナ禍にジャストフィットしたソロサウナには、それ以外にも沢山の効果や利点があるという。それを確かめるべくヘビーサウナーの私が体験取材してきた!
「サウナー」「ととのう」ブーム到来
「サウナー」「ととのう」などの用語も流行し、昨今一大ブームの様相を呈しているサウナ。あらゆる娯楽が規制されるコロナ禍において手軽に癒しを得られるとあって、専門施設は週末ともなれば入場制限がかかるほどの人気店もあるほどだ。
筆者も週3~4回はどこかのサウナで汗を流しているヘビーサウナーなのだが、先日ある気になる情報が耳に入った。それは東京・神楽坂に『tune』という新たなサウナ施設がオープンしたという。
ここのウリは何といっても、ソロサウナ。つまり、〝おひとり様〟で入れるサウナだというのだ。群雄割拠と化したサウナ業界においてのソロサウナの実力とは? また、コロナ禍におけるソロサウナのメリットとは? 実際に行って試してみた!
まず行ってみて驚いたのが、外観のオシャレさだ。
それもそのはず1階がカフェとなっており、その奥が『tune』の受付となっている。そのため従来のサウナがまとっていた「猥雑さ」や「おじさん」というイメージが払拭されており、性別や年代を問わず入りやすいつくりとなっている。
アルコールチェックが必須
受付では検温とアルコールチェックが。サウナ室内では必然的にひとりとなるため、酒気帯びで入ってしまうと事故の恐れも。ゆえにアルコールチェックが必須というのは、ソロサウナならではといえる。
また高温により髪を傷めてしまうので、それを防ぐサウナハットの無料レンタルもあり、この配慮は嬉しい。
部屋に入ってみると室内は黒を基調したデザインがなされ、まるで高級リゾートのSPAのようだ。
さっそく服を脱いでサウナ室に入ってまず感じたのが、その広さ。大人がゆうに寝転がれるスペースがひとり占めとは、何と贅沢なことか。
「本格フィンランド式」を謳うだけありサウナストーンで熱せられた室内は、室温計が指す通り80度と心地いい。
しかしハードサウナーである筆者には物足りない温度ゆえ、さっそく傍らに置かれた白樺のアロマ水に手をかける。
柄杓で軽くすくい、ゆっくりとサウナストーンの上に。ジュワジュワジュワ~~という音とともに上がる体感温度、吹きだす汗。これは気持ちいい!
サウナストーブは本場フィンランドから輸入しており、こうして水蒸気を発生させ発汗作用を促進する「フィンランド式ロウリュ」を、自分のタイミングで体験できる。
通常のサウナなら80度~が室温のデフォであり、その温度が変わることはない。しかしここ『tune』なら、「熱すぎるのは怖い」という初心者から「ガンガン熱くしたい」というヘビーユーザー両方の夢が叶えられるのだ。
シガー・ロスの歌声が…
するとここでサウナ室の外からシガー・ロスの歌声が……これ、店のBGMではない。部屋にブルートゥースが設置されているので、自分の端末につなぎ好きな音楽を楽しめる作りになっているのだ。
サウナでの音といえばテレビか有線、もしくは無音と限られていた。大量に汗を流しサウナでトリップしている最中、自分の大好きな音が聞けたなら……と筆者は何度思ったことか。
そんな〝サウナ×音〟を夢想してやまなかったサウナーにとって、『tune』はそれを実現できる場所でもあるのだ。
御法度の〝寝サウナ〟もOK
さて「コロナ禍のなか癒しを求める客で行列のできるサウナ店も」と冒頭で書いたが、サウナ自体が究極の密状態にあるのも確か。まあみんなお喋りなんかせず、黙食ならぬ黙サウナしているのだが、「怖い」と感じる方もいるだろう。
筆者もコロナが蔓延しだしたころ、うっかり咳が1回出てしまっただけで隣客ににらまれた経験がある。しかしソロサウナなら、そんな気苦労もない。誰の目も気にすることもなく、通常のサウナ施設では御法度の〝寝サウナ〟だってできるのだ。
「誰の目も気にすることもなく」でいえば、例えばさまざまな理由から「他人に裸を見られたくない」という人や、タトゥーが入っているだけで立ち入り禁止にされてしまう人にもやさしいのがソロサウナだ。
そんなことをぼんやりと考えていると、すでに8分が経過。汗という汗が全身を伝い、もう限界! サウナ室を飛び出し、シャワーに駆け込む。
とここで、「え!? 水風呂ないの?」と思ったサウナーも多いだろう。サウナと水風呂でワンセットだし、水風呂のないサウナなんてサウナじゃない、筆者も最初はそう思っていた。
しかしここのシャワーは違った。
400口径のオーバーヘッドシャワーが、頭はおろか肩幅をすっぽり覆ってくれるので水風呂の代わりを充分に果たしてくれる。冷却器によって常時10~15℃前後にキープされた水は心地よく、かかとを上げて自分から水を迎えにいってしまったほど。感覚としては、汗を流すことなく川に飛び込むという究極の水風呂を想起させた。
そして「ととのいスペース」も用意されているので、アームチェアに腰かけ、目を閉じる。全身は水風呂でキンキンに冷えているが、体の芯はポッカポカ。頭上に設置されたサーキュレーターから届く柔らかな風を浴びていると、うっかり寝落ちしそうになるほど頭のなかは真っ白になった。
このサウナ×シャワー×外気浴を繰り返すこと3セット、それを終えたところで50分、終了10分前を知らせる電話が受付から鳴った。
最後に、問題となるのがその値段だ。1時間で3800円(4月から80分4800円も追加)と通常のサウナ施設と比べると、確かに割高だ。しかしコロナ禍において気軽に飲みに行けないこのご時世、1回飲みにいったと思えば悪い値段じゃない。
しかもあちらは最後に二日酔いをくれるが、こちらは心も体も最高に気持ちよくなれる。うるさ型の常連客の目を気にする必要もなく寝転ぶことだってできるし、好きな音をフルボリュームで楽しむことだってできる。
人前で裸になることへの抵抗やタトゥーといった、心情や身体などの面でサウナから遠ざかっていた人たちも、気兼ねなく利用できる。ソロサウナとはいろんなバリアから解放してくれる、そんな場所なのかもしれない。
(取材・文:村橋ゴロー、編集:濵田理央)