ブランド・アクティビズムとは?企業に求められる5つの理由

我々は、ブランド・アクティビズムは広く普及しているものであり、パーパスを利益へと変えられると信じている。
IMAGE: BURGER KING FINLAND
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サステナブル・ブランド

この1年はブランド・アクティビズムにとって象徴的な年だった。新型コロナウイルスが3月初めに猛威をふるい始め、ビール会社は消毒液を作り、高級ファッションブランドはマスクを作り、ダイソンは新たな人工呼吸器をわずか10日間で完成させた。さらに、eコマースの記録的な売り上げや相次ぐ買いだめによって、食品チェーンは従業員に多くのボーナスを出し、治療の最前線や地域コミュニティのために数百万ドルを寄付した。(翻訳=梅原洋陽)

5月25日まで話を進めよう。ジョージ・フロイド氏がミネアポリスの警察官に殺害され、暴動や暴力、市民の不安が世界中に広がった。企業のCEOらは賠償委員会の設置と警察組合の改革を求めた。フォーブス誌によれば、2800万人以上のインスタグラム利用者が#BlackoutTuesday(真っ黒のタイル画像を一斉に投稿するハッシュタグ)に参加したという。また、米国のいくつかの老舗家庭用品ブランドが奴隷制時代のステレオタイプをブランディングに採用していることにも注目が集まった。

最近では、パタゴニアが米大統領選挙に対し明確な立場をとった。TikTokユーザーは、トランプ氏の選挙活動についてクリエイティブに煽ってヘッドラインを埋め尽くしている。彼ら、彼女らはトランプ陣営のオンラインストアさえもターゲットにしている。ショッピングカートに何千ドル分もの商品を入れることで、在庫を補填させ、トランプの活動資金に負担をかける狙いがあった。

ブランド・アクティビズムとは何か

ブランド・アクティビズムとは、企業がそれぞれの信念やパーパス(存在意義)、価値観に基づいて、社会が直面している最も緊急の課題の解決に必要な変化を促すために、自らの立場を明確にすることを指す。フィリップ・コトラー氏とクリスチャン・サーカー氏が著書『ブランド・アクティビズム(Brand Activism: From Purpose to Action)』で提言していたように、「先進企業がよりよい世界をつくるためにどう行動するか」ということだ。

最近では、とても良い例がいくつもある。ベン&ジェリーズやその他の企業による人種差別を終わらせる試みや、スパイス小売ペンジー・スパイス(Penzey Spice)は店舗の商品を配ることでブラック・ライブズ・マター運動を支援した。バーガーキングとマクドナルドは両マスコット同士がキスする広告を発表することでゲイ・プライドへの支持を表明。スキンケアブランド「オレイ(Olay)」は11月26日、米チェーンストア・メイシーズのサンクスギビング・デイ・パレード用の山車で、STEM(科学・技術・工学・数学)分野で活躍する女性が少ないという格差問題の解決に取り組み、女性の同分野での活躍を後押しするメッセージを発信する方針だ。

一部の企業は、ブランド・アクティビズムやFacebookからの一時的な広告の撤退運動などを、「過剰に人目をひくPR活動」として無視する企業もある。しかし、われわれは、ブランド・アクティビズムは広く普及しているものであり、パーパスを利益へと変えられると信じている。

ブランド・アクティビズムが求められている5つの理由

強まるZ世代の影響力

英PR会社フロイト(Freuds)のCEO、アーロ・ブレイディ博士はこう話している。「近年、地域コミュニティでの活動はきわめて重要になってきており、地球規模の目標のために『ゲートウェイ・ドラッグ(とっかかりとなる薬物)』のような役割を果たします。Z世代は、ちょうどこっそり見ているスーパーの棚にある、『1つ買えばもう1つは無料』コーナーに引き寄せられるように、インパクトに夢中になるのです」。Z世代はまた、米国だけでも推定1430億ドル(約14兆9600億円)と、膨大な購買力を持っている。購買力も変化をもたらす力の一つなのだ。

ブランド・アクティビズムは真のPR活動につながる

『Fast Company』でアダム・フェッチャー氏はこう指摘している。「ベン&ジェリーを真似ようとしている企業はたくさんあるが、多くの企業には見返り以上の目的を持って活動してきた歴史がない。信頼を勝ち取るためのマニュアルはなく、近道もない。信頼を得るには、PR活動に頼らない基盤が必要になる。世間からの関心よりも、実際にもたらす影響のために注力できれば、来たるべき時に、メディアはこれまでの努力を深みのある形で取り上げてくれるだろう」。

人々は、企業が格差を埋めてくれることを期待している

Bコープ(B Corp)のメディア『B the Change』は「購買者は価値観に沿った活動をする企業を選択することで、財布を使って世界が必要とするビジネスを行う企業へ一票を投じている。それが、より持続可能で公正な経済への道を切り開くことにつながるのだ。政府や制度が道徳的リーダーシップを発揮しなくなっている不幸な時代に、われわれは購入するブランドにリーダーシップを期待しているのだ」と説明している。

また、PR会社エデルマンの調査「トラストバロメーター」では、81%の消費者が「企業に正しい行いをしてほしい」と述べ、71%の人が「人よりも自分の利益を優先することは、永遠に信頼を失うことにつながる」と述べている。

パーパス・ドリブン企業はより成果を上げている

デロイトによれば、パーパス(存在意義)に基づき事業を行うパーパス・ドリブン企業は競争相手と比べ、より高い市場シェアを獲得し、通常の3倍の成長率が見られ、労働者と消費者の満足も高いようだ。この傾向は、世界中の若者が前の世代よりも深い目的意識をもって成長し、懸念する問題を直接支援する製品を求めていることでさらに強まっている。ブランド価値を測定し、ランキングを発表する「ブランドZ」もまた、ブランド・パーパスとブランド力(顕著な特徴、意味づけ、差別化)とを関連づけている。オムニチャネルは、製品が手に入ることは保証しているが、精神的な繋がりを確立するにははるかにコストがかかり、容易ではない。

ブランド・アクティビズムは成長への道を切り開く

デロイトの報告書によると、「パーパスを持って導き、ストーリーの伝え方や影響力を明確にし、すべての人に焦点を当てて共感を集めることで、多くの企業は競争相手をしのぎ、関わるすべての人に影響を与えている」。だから、価値を高め、世界をより良い場所にする支援を行うブランドの株を買うなら、基本的にはアクティビスト・ブランドを選ぶべきだ。

企業ブランド、小売業者、非営利団体が小売店でパーパスを実行できるよう支援を行うB コープの一社であるわれわれとしても、この考え方には心から賛同する。ブランド・アクティビズムは内側から始まる。そこにルールブックはない。 責任感から解放されることや、物事がいつも計画通りにいくこともないーー。でもそれがどうしたというのだろうか。それでいいのだ。

オーセンティック(本物)であることが大事だ。自社ならではのパーパスを理解し、ブランドが何のために立ち上がり、何を独自に提供し、世界が何を必要としているのか、人々が何を求めているのか、これらの交差する場所に立つことで、パーパスと利益を生み出す「方法」とをつなぐことができるのだ。

そして、社会的イノベーションを原動力に、これまで以上に意識の高い消費者によって監視されているビジネスのあり方が、世界が必要とすることや人々が求めているものに対して、持続可能で実現可能な解決策を生み出せたなら、企業やブランドは世界に変化をもたらす最強の手段になりうるし、またそうなるべきなのだ。

それこそが、ブランド・アクティビズムの正しいあり方だ。

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