脂ののったサーモン、ぷりっとしたエビ、つややかなホタテ。
これ本当に全部、石...?
ある美大生が卒業制作で作った「寿司」が、「本物にしか見えない」「ただただすごい」などとSNSで話題を呼んでいる。
作者は、東京都内の美大を春に卒業する4年生のはまさん(@ha_ma_73)。
『いただきます』と題する作品は、49の寿司をすべて石で作っている。
どうやって作った?
石でできているとは思えないほどリアルで、ネタの血合いやツヤといった細部まで丁寧に再現されている。
はまさんによると、石を研磨機で粉にして固めることでネタの柄を表現したり、石の粉を調合して色を作ったりしたという。
シャリは大理石を使用。大学構内や川に落ちていた多彩な色や種類の石を集め、「ネタ」の材料にしていった。
売れ残りをバケツに入れて廃棄
作品をよくよく見ると、思わずギョッとする。
耳や鼻、指など人体の一部がネタになっている寿司があるのだ。
はまさんに意図を尋ねると、実は「食品ロス」に対する思いが込められているという。
はまさんはバイト先のスーパーで、鮮魚のパック詰めをしたり、ぶりなどの魚をさばいたりしている。
「閉店間際になると、売れ残りを大きなバケツに入れて、翌朝には処理をするトラックに持って行ってもらいます。『捨てといて』と頼まれるたびに、『同じ生き物なのにどうしてこんなにも命が軽く扱われるのだろう』という疑問がずっとめぐっていました」
そこで、人の体を寿司のネタに見立てて表現することを思いついたという。
「アートの意図を作品だけで100%伝えるのは難しいのですが、シャリの上に乗っていれば、人はそれを『食べ物である』と認識すると思いました。人体をシャリに乗せて他のネタと混ぜることで、『自分たちと同じ命を食べている』など、どんな形であれ何かしらの気づきがあればいいなと思いました」
コロナ禍でも見てほしい
はまさんの作品は、国立新美術館(東京都・六本木)の「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」で展示されている。
SNSで作品の写真を投稿した理由について、はまさんは「2020年の五美大展はコロナで期間短縮になりました。今年は通常通りの開催でしたが、やはり人が少なくなったように感じています。SNSならたくさん人の目に入ると思い、投稿しました」と明かす。
「大学では素材として比較的人気がない石ですが、私は昔から石が好きで、自分が死んだ後も作品として残り続けるのでとても惹かれました。自分が生まれるよりもっと昔にできた石から作品を作ることの楽しさ、たくさんの種類の石が持つ魅力を、多くの人に伝えられて嬉しいです」
はまさんの作品『いただきます』は、2021年2月27日まで国立新美術館で展示される。
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